6月24日(金)、7月からいよいよ夏のバカンスが始まりますが、フランス国鉄(SNCF)の列車予約は満席が相次いでいます。ポストコロナで今年の春から増加の一途をたどるフランスの旅行需要に合わせ、SNCFは今年の夏のピークに50万席の大幅増加を発表しました。一方、車の利用はガソリン代の高騰で大幅な出費増となりそうです。
夏のバカンスの列車予約、過去最高に
SNCF社長ジャン=ピエール・ファランドゥ氏(Jean-Pierre Farandou)の昨日23日の発表によると、今年の7月〜8月の二ヶ月間の出発において、すでにコロナ禍前の2019年比で10%も多い800万枚の切符が売れており、現在も予約の勢いは続いています。
同社では、今年の夏「過去最高記録を更新する」と見ています。例年7月より8月の方が混み合っており、また今年の小中高の夏休みは7月7日からですが、今年は6月末、7月の予約も好調です。
すでに週末の予約は一部の行き先は満席状態で、平日の予約に残席があるのみとなっています。
これを受けSNCFは「50万席の増席」を決定しました。この大幅な増席について、ファランドゥ氏は「当社の列車は数車両を繋いだ1つのブロックになっているため、同じ車種の車両ブロックを2つつなぐことで、座席を倍にできます」と説明しています。
氏はさらに、今年に入ってからのガソリン代の高騰を受け「列車を利用して節約を」と呼びかけています。
高くつく車利用、それでも車でバカンス、6割以上
フランスで最も販売が多い自動車燃料は軽油ですが、その1リットルあたりの料金がついに2ユーロを越え、2.13ユーロ(約303円/1ユーロ=約142.5円)になりました。これまで軽油より高かったガソリンですが、その中で最も売れているSP95-E10が1リットルあたり2.08ユーロ(約296円)と軽油より安くなっています。
ちなみに昨年同時期の1リットルあたりのガソリン価格は1,52 ユーロ(約217円)、軽油は1,42 (約202円)でした。
つまり軽油価格は実に50%、ガソリンは37%も上昇しています。
例えば、パリ〜ニース間(934km)の片道で40ユーロ(約5700円)も余計にガソリン代がかかることになります。それでも今年の夏、65%のフランス国民が「自家用車でバカンスに出かける」ことが、調査会社イプソス社(Ipsos)の世論調査で明らかになっています。
スーパーエタノールに注目
フランス政府はすでにガソリン代の補助として1リットルあたり18セント(約25円)の補助を出していますが、バカンス需要を見て期限の7月31日から8月31日までに延長しています。
バカンスの費用を少しでも抑える手段の一つとして、1リットルあたり0,85ユーロ(約121円)と破格のスーパーエタノール(Superéthanol-E85)に現在注目が集まっています。
これは植物由来のバイオエタノールの割合が60%〜85%のガソリンで、通常のガソリン車を利用するか、簡単な専用キットを取り付ければ利用できるという手軽さからも、今年に入り販売量が前年比で33%も伸びています。
国鉄運賃、2023年に値上げか?
燃料代が値上りする一方の車に対し、国鉄の運賃は値上げを免れることができるのでしょうか?
SNCFのファランドゥ社長は「今年は値上げする予定はありません」ときっぱりと答えています。理由は「今年分の電気はすでに昨年買い取ってある」からです。
しかしながら、SNCFの1年間の電気代は10億ユーロにも上り、2023年には見直しを迫られる可能性大です。
これに関し、ファランドゥ社長は「(環境のためにも)車から電車への切り替えを奨励し」、つまり利用者増によって乗車率自体を上げることにより、運賃の値上げは「リーズナブル」になるだろうとコメントしています。
執筆:マダム・カトウ