フランス語の敬称について

2022.02.21

パリ 国民議会 像

フランスの役所で書類を記入するときに、敬称の欄に略語が使われていることがあります。略語の意味がよくわからなかったという話を聞くこともありますが、この敬称にはどのような種類があるのでしょうか。

 

さまざまな敬称

Monsieur (男性に対する敬称) M.
Messieurs (Monsieurの複数形) MM.
Madame (女性に対する敬称) Mme
Mesdames (Madameの複数形) Mmes
Mademoiselle (未婚女性に対する敬称) Mlle
Mesdemoiselles (Mademoiselleの複数形) Mlles
Maître (弁護士、芸術家) Me
Professeur (教授) Pr
Docteur (博士、医師) Dr

 

男性は未婚でも既婚でも「Monsieur」なのに対し、女性は既婚者は「Madame」未婚者は「Mademoiselle」と区別されるのは性差別であるとし、近年のフランスの行政では「Madame」に統一されています。性差別や人種差別などに対して敏感な人々も「Mademoiselle」の使用をしなくなりました。

ファーマーと女の子 ラベンダー

未婚か既婚か、と言う行政上の区別は、私の個人的な感覚としては、フランス人が大切にしている個人の自由をおびやかしているように感じます。また「Madame」の方が、一人前の大人の女性という感じがしますので、私は「Madame」を使う方が丁寧ではないかと思います。

 

Maîtreは弁護士?先生?

弁護士には「Maître」をつけます。女性でも同じです。「Maître」の女性形の「Maîtresse」にはしません。ちなみに小学校の先生を「Maître(男性教諭)」や「Maîtresse(女性教諭)」と言います。私は子供の送り迎えで小学校に行く機会が多かったため、よく耳にしたからでしょうか、名前を付けずに「Maître」「Maîtresse」と言うと、生徒たちが「先生!先生!」と呼びかけているような感じがします。しかし弁護士事務所や裁判所にほとんど馴染みがありませんので、個人的にそう感じるだけかもしれません。他にも「Maître」の敬称を持つ人が多く出入りする場所では、それぞれ違う感覚で受け止められているのではないかと思います。

弁護士だけではなく、音楽家など芸術家にも「Maître」を付けることがあります。「Maître」は英語に訳すと「Master」なので、「師」「先生」と呼んでいることになります。

日本ではよく政治家を「先生」と呼んだりしますが、フランスでは政治家を「Maître」と言いません。
大臣クラス以上の政治家は「Monsieur le ministre(大臣)」「Monsieur le président(大統領)」のように呼びます。

現在意見が分かれていますが、女性大臣の場合は、文法的には「Madame le ministre」が正しいとされています。しかし、フェミニストの政治家は「Madame la ministre」を使い、議会でもそのように女性大臣を呼ぶように主張して、言い合いになっている場面を見ることもあります。

ProfesseurとDocteur、どっちがえらい?

Professeur」 と「Docteur」は、男性にも女性にも使うことができます。ただし略語ではなく綴りをすべて書くときは、女性の場合「Professeur」の代わりに「Professeure」、「Docteur」の代わりに「Docteure」と書くこともあります。

Professeur」(教授)と「Docteur」(博士)の使い分けにも少し注意が必要です。以前、国際会議で会った方に「Docteur Lambert」と声をかけたら、「Professeur Lambert」と不機嫌に返されたことがありました。「Docteur」「Professeur」の敬称を持つ人にあまり囲まれたことはなかったので不注意だったと思いますが、敬称にこだわる人がフランスにもいるんだなあと実感した経験です。

Docteur」は博士号という学位を持っている人につける敬称なのに対し、「Professeur」は博士号を取った人の中から教授になった人、という意味です。そういうわけで「Docteur」よりも上のレベルの人に付ける敬称なのですね。

まとめ

フランス語の敬称からフェミニズムや、社会的地位の話になってしまいました。時代がこのまま進んでいくと、「Monsieur」や「Madame」も差別であるということで無くなる日が来るのではないでしょうか。そう考えると、日本語の「〜さん」「〜様」には性差別がなくて良い言葉なのだと再認識しました。

行政では「Mademoiselle」はもう使わないと知っても、優しそうなおじいさんが、親切にしてくれた小さな女の子に「Merci, mademoiselle !」と声をかけているような光景は、微笑ましいと思ってしまいます。

執筆 ペレ信子
ブログ:Plaisir de Recevoir
インスタグラム:@granden25 

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