2024年3月29日(金)、フランス人の2022年の平均給与は額面で3,466ユーロ(約565,000円/1ユーロ=約163円)、手取りで2,630ユーロ(約429,000円)でしたが、2年前と比べインフレによる物価がぐんぐん上がっている今年、平均給与はいくらになるでしょうか?
平均給与、格差の広がり
フランス国立統計経済研究所(L’Institut National de la Statistique et des Études Économiques :インセ)が算出する「平均給与」は、フランス人給与所得者の給与の合計額を頭数で割ったものです。
半日など時短で働く人の給与に関しては、フルタイム(週35時間)で働いた場合の給与に仮換算して平均給与の算出に組み込んでいます。こうすることで、時短労働者の数が増えている現在の労働市場の実態を数値に反映させることができます。
2022年の民間企業に勤める労働者の平均給与は手取りで2,630ユーロでした。公務員など公的機関で働く人の手取りは2,430ユーロ(約396,000円)ですが、これは2021年のデータに基づくものです。
管理職と非管理職の格差
この平均値の数字の裏には、労働社会における「格差」がひそんでいます。なぜなら対象を管理職だけに絞ると、平均給与は4,490ユーロ(約732,000円)に跳ね上がります。
これに対し、非管理職のホワイトカラーの平均は1,880ユーロ(約306,000円)、工場労働者や職人などのブルーカラーでは1,990ユーロ(約325,000円)と、いずれも管理職の手取りの半分以下になっています。
公的機関で働く人の平均給与を公務員だけに限定すると、手取りは2,500ユーロ(約407,000円)、それ以外の労働者は1,990ユーロ(約324,000円)となっています。
より現実味のある、給与所得の中央値
平均値は、給与所得の合計を労働者の頭数で割って算出するのに対し、中央値は給与所得の高いほう50%と低いほう50%の2つのグループに分け、高いほうのグループの最も低い給与と低いほうのグループの最も高い給料の平均を割り出した数値です。
この方法で算出したフランスの給与の中央値は、2022年の数値で2,091ユーロ(約340,000円)と、より現実味のある数値として利用されることが多いようです。
男女格差、縮まりつつも14%
男女の給与格差は1995年から2020年までに9ポイントも縮まりました。
2008年から2020年の間だけをとっても6,8ポイントとその差は縮まり続けていますが、男性のほうが女性より14%も給与所得が高くなっており、まだまだ大きな差がついています。これは主に女性のほうがパートタイマーが多いことに起因しています。
民間企業では、同じポストで比べても女性のほうが4%給与が低いことが明らかになっています。
どうなる?2024年のフランスの給与
現在の最低賃金(SMIC)は、額面で1,766.92ユーロ(約288,000円)、手取りは1,398.92ユーロ(約228,000円)になっています。(ちなみにフランスの最低賃金の変更は毎年7月1日に行われるため、金額は昨年7月に改正されたものです。)
昨年2023年はインフレ率が急上昇したことから、企業もそれに合わせて前年比5~6%の上昇を強いられています。
昨年末のインフレ率が4.9% に対し、今年のインセの予想が2.6%と緩やかになってきたことから、今年の賃金の上昇も同様になるとみられています。
しかしながら、フランスの給与所得者のうち最低賃金で働く人の割合は2023年で17,3%、上昇を続けています。
政府はこの現状および、最低賃金をわずかに上回る低賃金層の給与上昇率が低いことも問題とし、その割合が多い分野の企業に対し、労働者に「公平な分け前」を渡すよう働きかけています。
連帯省(ministère des Solidarités)内の統計部門が算出した数字によると、フランスで「なんとか暮らしていく」には、現在の最低賃金の額面とほぼ同額の1,760ユーロが必要なことが明らかになっています。
執筆:マダム・カトウ