８月20日（金）、昨日19日でフランス国民の60％のワクチン接種が完了し、１回目の接種を終えた人は69％に達しました。第４波で感染拡大が続き長期化する中、「コロナ禍は終結するのか？」の質問に感染症学者らが予想される２つのシナリオを回答しています。
１.より強力なコロナ変異種が登場し「終結しない」は非現実的？
ワクチン接種と感染者数の増加による「集団免疫の獲得とコロナの変異能力との【応酬】が続く」という最初のシナリオでは、人類が「ホラー映画」のワンシーンのように今後もウイルスと戦い続ける運命とになります。
英国発祥のアルファ株やインド発祥のデルタ株種のように、新型コロナウイルスがより感染力の高いものに変異することが証明されています。よって、今後も更に感染力の強い変異種が現れ、第五波、第六波といった感染拡大が繰り返し起こるかもしれません。
最悪のケースでは、現存のワクチンや感染による抗体が効かない新たな変異種の登場も考えられます。その場合「ワクチンの更新と再接種が必要になる」とモンペリエ大学（Université de Montpellier）の感染症専門家ミルセア・ソフネア（Mircea Sofonea）氏は述べています。
ウイルスの変異を予想するのは困難なため、事前に新たなワクチンを用意することはできません。
現存する最も感染力の高いウイルス、デルタ株
幸いにも「新型コロナウイルスの変異能力は限定的」と感染症学者のブリュノ・リナ（Bruno Lina）氏は説明しています。今まで発生した変異種は単に「同じウイルスが遺伝子的に進化したもの」つまり、元は同じウイルスです。
変異する中で、より感染力の強い変異種が他の変異種を圧倒して主流に置き換わります。
リナ氏は、現在猛威を振るっているデルタ型は「現存する世界で最も感染力の強いウイルス」であることから、「これ以上感染力の強い変異種の登場は考えにくい」と述べています。
２.重症化リスクが減り、風邪のようになる− 最も現実的なシナリオ
最も現実味のある第二のシナリオは、「（今まで出現した）他の呼吸系ウイルス同様に、季節によって流行し重症化リスクの低いありふれたものになる」というものです。
ウイルスの病気を引き起こす能力が弱まり、「感染範囲は現在のように世界的な流行ではなく、風土病のように限定的になる」とリナ氏は説明しています。
ただし、ソフネア氏は「ウイルスは消えて無くなるわけではなく、常に存在し続ける」とし、新型コロナウイルスつまり、SARS-CoV-2はいずれ毎年冬に流行し風邪を引き起こすウイルスの一員になると見ています。
ウイルス学者のイヴ・ビュイッソン（Yves Buisson）氏は、「インフルエンザのような流行病になり、重症化を避けるためワクチン接種やマスクの着用が期間限定で必要になる」と述べています。
コロナ禍今後１〜２年？
免疫学者のアラン・フィシェール（Alain Fischer）氏もこのシナリオを最も有力視していると今年の４月に発表していますが、問題はそれが「いつなのか？」です。
それについて、ビュイッソン氏は「（フランスだけでなく）世界中でいつ集団免疫を獲得できるかによるため、誰も予測できない」と述べています。
一方、リナ氏は「２ヶ月では無理な話だが、５年かかることもない。多分今後１年から２年が相場だろう」と予測しています。
３.新型コロナが「完全に消えて無くなる」−ありえないシナリオ？
天然痘の予防接種はもうどこの国でも行っておらず、ポリオも消滅しようとしています。
しかし、感染症学者たちは口を揃えて「新型コロナは完全には無くならない」と述べています。その理由は、コロナウイルス 自体が風邪のウイルスであることから、風邪が無くならないのと同じように新型コロナも存在し続けるからです。
モンペリエ大学のソフネア氏によると、そもそも天然痘の撲滅は「大変稀なケース」で、その理由として「ワクチンが大変有効だった」ことと、ウイルスが変異するためには動物というホスト（宿主）が必要だった」ことをあげています。
ビュイッソン氏は、「新型コロナウイルスは変異します。変異できるということは、インフルエンザのように適応力があるということです」と説明しています。
つまり、一旦感染力が弱まってもまた現れるわけです。
残念ながら、今後も長い間コロナウイルス についての話題は尽きないでしょう。
執筆：マダム・カトウ
