7月13日(火)、デルタ変異種による新規感染者増で新型コロナ第4波を警戒したマクロン大統領は、昨日12日、対策に有効と考えられるワクチン接種のペースを上げるため、コロナパスポートの利用範囲の拡大など新たな対策を発表しました。発表の直後から接種予約が殺到し、1日で過去最高の95万人が予約しました。また、懸案となっていた介護士のワクチン接種義務は、法制化する事が発表されています。
21日より、映画館や美術館等、娯楽施設の入場にコロナパスポート
7月21日から13歳以上のすべてのフランス国民を対象に、50人以上の人が入場する文化施設などでコロナパスポートの提示が義務となります。つまり、映画館、劇場、ライブハウス、美術館および博物館に行くには、2回の接種を終えるかPCR検査の陰性証明が必要になります。
屋外でもテーマパークや遊園地などの娯楽施設、フェスティバルなどの催しへの参加も同様です。
8月上旬から、列車やフライトでの長距離の移動、カフェ、病院でも提示義務
夏休みでの移動が本格的になる8月からは、列車、バス、航空での長距離の移動にもコロナパスポートが義務となります。
更に、病院や医療介護施設に入る際、更にカフェやレストラン、ショッピングセンターなど大型商業施設に行くのにも必要となります。これらの施設では、入店する顧客のみならず、従業員のコロナパスポートの所持も義務付けられることになります。
大統領は昨日のスピーチで、コロナパスポートの提示義務のある施設のリストは「今後追加されることになっている」と述べています。
10月から「医師の処方箋無し」のPCR検査、有料化
現在フランス中で気軽に無料で受けられるPCR検査(または抗原検査)は、この秋から有料化されます。
医師の処方箋がある場合を除き、イベント参加や海外旅行に必要なコロナパスポートの取得の為のPCR検査は無料で受けられなくなります。
検査の無料化を続ける事は、ワクチン接種を避ける人への「便宜を図っている」に過ぎず、医療保険に膨大な費用がかかっている上、「ワクチン接種が進まない」と以前より医療関係者から指摘されていました。
大統領演説後、ワクチン接種予約1分間で17,000人
ワクチン接種予約を受ける医療予約サイト「ドクトリブ」(Doctolib)によると、大統領のスピーチが開始された20時からアクセスが殺到しはじめ、20時50分頃まで約30分間サイトが停止する事態に陥りました。
同社の今朝の発表によると、同サイトは昨日は750万回もアクセスされ、1分間に17,000件の割合で予約が入っています。
昨晩の大統領演説から0時までの間に95万人もの人が第一回目の接種予約をしました。更に0時から今朝までの間に追加された35万人を入れて合計130万人になっており、現在毎分4000人〜5000人の予約が入っています。
ちなみにこれは5月11日に記録した予約件数471,396件の倍近くに当たり、過去最高記録を大幅に更新しています。
35歳未満の若者に接種促す
ドクトリブの代表取締役、スタニスラス・ニオックス=シャトー(Stanislas Niox-Chateau)氏は、正確な数字は公表しませんでしたが、今回の予約者の「多くが35歳未満」だと述べています。
9月15日より介護士の接種義務、法令化へ
介護施設や病院で働く介護士の接種が6割程度に留まることから、マクロン大統領は、今回の演説で「来週月曜の閣僚会議を経て国会に法案を提出し、介護士のワクチン接種義務の法令化に向け審議を行う」と発表しました。
大統領の演説を補足したヴェラン保健相(Olivier Véran)によると、夏の間は猶予期間とし、9月15日以降未接種の介護士は「就労する事はできず」その場合、「給与も支払われない」と明言しました。
ちなみに、欧州内ではイタリアやスペインで介護士の接種義務が導入されています。
9月以降、3回目の接種開始
2回目の接種を今年の1月〜2月に行い、接種後8ヶ月経った人に関して、9月から3回目の接種が促されます。
ワクチン接種義務化へ?
今回の演説でマクロン大統領は、国民全員のワクチン接種義務化については言及していませんでしたが、接種しない事による行動や就労への制限による「囲い込み」により、実質的には「義務化に向かっていると解釈できる」とされ、メディアでは法律関係の専門家も交えた様々な議論が行われています。
執筆:マダム・カトウ