7月9日(金)、新型コロナウイルスのインド変異型「デルタ株」によるフランスの新規感染者が急増しています。ヴェラン保健相(Olivier Véran)は「今週末には新規感染者の半数以上がデルタ株感染者」になるだろうと発表しています。
フランスの新規感染者、デルタ株急増により1ヶ月で55%増
昨日8日に発表された新規感染者は4,442人となり、1週間前の2,664人から実に5割も増えています。ちなみに新規感染者数が3,000人を越えたのは6月10日以来初めてで、約1ヶ月ぶりとなります。
今朝のラジオ番組に出演したヴェラン保健相は、昨日の新規感染者数のうち47.3%がデルタ株の一部を成すL452Rと呼ばれる変異株に感染しており、「今週末にはその値は50%を超える」と述べています。
感染力が60%高くインド由来と言われるデルタ株は、このL452R変異とE484Q変異の2つの変異を持つことが特徴ですが、
既にフランスの3地方—パリおよび近郊のイル=ド=フランス(l’Île-de-France)地域圏で51%、南西フランスヌーヴェル=アキテーヌ(Nouvelle-Aquitaine)で52%、南仏プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール( Provence-Alpes-Côte d’Azur)で60%ーでは、デルタ株が既に新規感染者の半数を超えています。
スペイン、ポルトガルへの旅行は避けてーヴェラン保健相
ヴェラン保健相はまた、デルタ株で感染拡大が広がる「スペインやポルトガルへの旅行は控えて」と訴え、まだ旅行を予約していない人はフランス国内の行き先を優先するよう呼びかけています。
賑わいを取り戻したフランスの観光地、マスク屋外着用義務復活も
ブルターニュ地方(Bretagne)の人気観光都市サン・マロ(Saint-Malo)、ノルマンディー地方(Normandie)の避暑地ル・トゥケ(Le Touquet)では、屋外でのマスク着用義務が再導入されています。
南仏の人口34万人の都市ニース(Nice)でも、夏のバカンス客による人口増に伴い、一部の混雑が予想される通りにおいてマスク着用義務の導入を検討しています。
ニース市長エストロジ(Christian Estrosi)氏は、「(再導入した場合は)街頭の監視カメラを活用する、アナウンスを流す、ドローンの利用などあらゆる方法で」管理を徹底すると述べています。
さらに、ビーチへの21時以降のアクセスを禁止することも検討しているようですが、今のところ日程は明らかではありません。
6月のロックダウン解除でようやく客足が戻ったフランス各地の観光地では、8月のバカンスシーズンで感染者が急増した昨年の二の舞とならないよう、神経を尖らせています。
新規入院患者、重症者減で病院の状況改善だが…
6月1日時点で8,000人を超えていた入院患者は、昨日7月8日7,539人、そして本日7384人と減少が続いています。
1週間前に1,162人だった重症者数は現在971人で、新規入院患者数も1,000人を切るなど病床逼迫は解消し、病院の負担は軽減されています。
死者数も6月上旬に100人を切った後減少が続き、過去24時間以内で25人となっています。
少なくとも1回のワクチン接種を終えた人は51%とようやく人口の半数を超えましたが、2回終了している人はまだ33%に留まっています。
感染症学者のアルノー・フォンタネ(Arnaud Fontanet)氏は、この夏の間に「とにかくワクチンを接種するよう」強く呼びかけています。さもなければ変異種拡大を抑えるには「手遅れ」となり「8月末に病床は再び逼迫する」と予想しています。
本日より、過去15ヶ月にわたり営業禁止となっていたディスコ、ナイトクラブが条件付きで再び営業が許可されましたが、フォンタネ氏は「ディスコはデルタ株の感染拡大を加速する」と再開に否定的な意見を述べています。
マクロン大統領、第4波懸念で新たな発表
これから8月にかけて多くの人が続々とバカンスに出かけますが、秋からの第4波を阻止すべく週明けの12日(月)、マクロン大統領とヴェラン保健相による記者会見が行われ、懸案となっている介護師のワクチン接種義務化や衛生パスポートの利用拡大など、新たな対策が発表される予定になっています。
また、現在開催されているUEFAユーロ2020の試合を観戦したフランスチームのサポーター数人がハンガリーでデルタ株に感染していたことが判明するなど、イベント開催に関する対策や条件に関しても再検討がなされています。
執筆:マダム・カトウ