コロナ禍の全国統一バカロレア 最終試験の合格発表

2021.07.08

試験 発表

7月6日(火)、フランス各地で、高校卒業資格に当たるバカロレア(baccalauréat)試験の最終結果が発表されました。今年はコロナウイルスの感染拡大により混乱もあったなかで、約70万の学生が受験しました。

 

バカロレアとは

バカロレアは、フランスの国民教育省(Ministère de l’Éducation nationale, de l’Enseignement supérieur et de la Recherche)が発行する後期中等教育(高等学校)の修了と、大学など高等教育への入学を認証する資格です。

バカロレアを得るためには、毎年6月に全国統一で行われる試験に合格する必要があります。通常は、高校の最終学年で受験しますが、高校卒業後に受験することも可能です。

今年度の受験生は70万3,700名で、合格率は90.5%で昨年より1.6%減少しました。なお、7月7日から9日まで、追補試験が行われます。

3つのコースと試験形式

フランスの高校は普通科・技術科・職業科の3コースに分かれており、それぞれに対応した3種類の試験があります。

今年度は、志願者のうち、53.7%が普通バカロレア(Le baccalauréat général)の試験を、26.5%が技術バカロレア(Le baccalauréat technologique)の試験を、そして19.8%が職業バカロレア(Le baccalauréat professionnel)の試験を受験しました。

それぞれの試験は、専攻によってさらに細かく分かれており、自由記述形式が中心の筆記試験や、口述試験、実技があります。

 

2021年、コロナ禍の試験実施

コロナウイルスの感染拡大を受けて、マスク着用の義務、ソーシャルディスタンスの確保、換気の徹底などはもちろんのこと、今年度の試験にはいくつかの変更がありました。

例えば受験前に陽性が判明した場合、6月の試験を受験することはできず、9月の追試を受けることになります。また、感染拡大によって6月の最終試験が行えない場合などの対策として、内申点(後述)を利用できる制度なども計画されていました。

その他の変更点

また、コロナウイルスに必ずしも関係なく、いくつかの形式変更がありました。具体的には、普通バカロレア試験の科目選択や、「哲学」試験に関係する変更です。

科目選択に関しては、従来、普通バカロレアの試験は経済・社会系、文学系、科学系に分かれていたところ、今年度からは、生徒が自由に専攻科目を2つずつ選ぶ方式に変わりました。高校のコースに関わらず、分野をまたいで受験できるようになったのです。

「哲学」の科目では、従来は3題のうち1題を選択する試験でしたが、4題のうち1題を選択する形式に変わりました。通常は6月の最終試験(論述形式の筆記試験+口述試験)の点数が最終成績に反映されるのですが、今年は内申点と最終試験のうち、成績の良い方を取ることができる仕組みになっています。

「哲学」今年の出題

ちなみに、6月の最終試験の初日に行われる「哲学」は、フランスならではの科目としてよく知られていますが(こちらも是非!)、今年度の普通バカロレアの試験では、以下のような出題でした。

「議論することは、暴力を放棄することか?」(”Discuter est-ce renoncer à la violence ?”)
「無意識は、あらゆる形式の知識を免れるか?」(”L’inconscient échappe-t-il à toute forme de connaissance”)
「我々は未来に対する責任を追っているか?」(”Sommes-nous responsables de l’avenir ?”)
「デュルケーム(1893)『社会分業論』(De la Division du travail social)の抜粋について論ぜよ。」

 

近年のバカロレア改革

フランスのバカロレアは、ナポレオンが設置して以降、200年以上の歴史をもちます。しかし学力向上や格差解消の観点から、制度改革が議論されてきました。

論点はさまざまありますが、その一つが「内申点」に関するものです。

内申点を重視する方向へ?

バカロレアの最終的な合否は、毎年6月の最終試験(épreuve terminale)の結果だけでなく、高校での内申点(contrôle continu)を加えて判定されます。現在は、最終試験が60%+内申点が40%という配分です。

しかし、最終試験の簡素化や、より長期的な成績評価のため、現政権のジャン=ミシェル・ブランケール(Jean-Michel Blanquer)国民教育大臣は内申点を重視するための改革を打ち出しています。

公平な評価につながるか?

内申点には、高校2年生で受験する履修科目の共通試験(épreuve commune)と、平常点が含まれます。ブランケール大臣は、このうち共通試験を廃止し、平常点のみで評価することを提案しています。

この提案は、試験の一発勝負で成績を判断せず、学生をよく知る教師や学校の意向が反映されやすくなる点がメリットと考えられています。

一方で、普段の学習態度などから教師が平常点を判断するには、生徒や保護者の意向が反映されやすくなる、という意見があります。また、教師や学校の目線で評価を行えば、本来は全国統一の基準で行うはずの試験に、学校差や地域差が出る可能性があるとの批判もあります。

どのような視点で公平な成績評価を行うのか、今後の議論に注目です。

執筆あお

参照
フランス国民教育省 Le baccalauréat général
細尾桃子(2018)「フランスの高校改革と大学入試改革ー高校の内申点重視の功罪ー」日本教育学会 近畿地区 研究集会2018年5月12日発表資料 PDF

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