4月16日(金)、パリノートルダム寺院の大規模火災からちょうど2年を迎えた15日、マクロン大統領が現場を訪問しました。当時「2024年に再開する」と宣言した大統領の約束は果たせるでしょうか?
「再建」工事は…まだ始まっていない!?
ノートルダム寺院の2019年4月15日の火災は、発生から消火まで約15時間を要し、尖塔および塔を支える内部の木造部分が焼失するなどの大規模な破損により、倒壊が懸念されていました。
当時、現場に向かったマクロン大統領は「再建」を約束し、5年後の2024年に復興するという力強いメッセージを世界に向けて発信しました。しかしながら、2年ぶりに現場を訪れた大統領は、工事責任者から「再建工事はまだ始まっていない」と告げられました。
火災当時のノートルダム寺院は修復工事中であったため、外側に鉄パイプの大掛かりな足場が組まれていました。火災の熱でその鉄パイプが溶け、寺院の外壁にへばりついていました。この溶けた鉄パイプの撤去工事が実に厄介で、この作業だけに2020年末までの時間を費やしました。
現在は新しい足場が組まれ、最上階には巨大なプラットフォームが設置されています。これは、寺院を雨から守る「屋根」のような役割も果たしています。
倒壊の危機から脱するのは、今年の夏
工事関係者によると、今年の夏の終わりには、建物の補強工事が完了し、懸念されていた「倒壊の危機」を脱することができるようです。
「オリジナル通り」に再建、「環境汚染」のジレンマ
再建については様々なアイデアが出されたものの、最終的には「本来の姿」への再建が決められているため、屋根を支える骨組みの部分は木組みで作られています。また、倒壊した尖塔も19世紀にフランスの建築家ウジェーヌ・ヴィオレ・ル・デュク(Eugène Violet-le-Duc)が設計した通りに復元されることになっています。
パトリック・ショヴェ(Patrick Chauvet)主任司祭によると、火災と雨漏りでかなり破損していた24の副祭壇のうち、現在2つの祭壇の修復が完了しています。
問題は屋根の部分です。鉛で作られた屋根は火災で全て溶け落ちてしまい、鉛の大気汚染による工事スタッフや近隣住民の健康への影響が当初から大きな問題になっていました。
にも拘らず、フランス文化庁管轄で歴史的建造物の保護管理を統括する、歴史建造物機関(Centre des monuments nationaux :CMN)は、屋根の復元にオリジナルと同じ鉛を使用することを「推奨」しています。代替策として考えられるのは「亜鉛」ですが、ショヴェ主任司祭は「亜鉛も環境と健康に悪いことが問題」と述べており、どの素材で作るかは決まっていないようです。
昨日のニュース(仏語):当時の状況や住民、関係者のインタビューなどご覧いただけます。
寄付金は十分すぎる?
ノートルダム寺院の火災を写した動画が一瞬にして世界中に広まったことから、推定総額8億3300万ユーロ(約1086億円)という莫大な寄付金が個人や大企業から集まりました。
文化相ロズリン・バシュロー(Roselyne Bachelot)氏は14日、「今現在、工事費は全て寄付金でまかなえており、今後も資金不足を心配する必要はないだろう」と述べています。
同氏によると「これまでかかった費用は1億ユーロ(約130億円/1ユーロ=約130円)」とのことですが、歴史記念物財団(Fondation du patrimoine)の会長ギヨーム・ポワトリアル(Guillaume Poitrinal)氏は、あるメディアで「すでに1億6500万ユーロ(約215億円)かかった」と述べるなど、実際のところいくら使ったかは明確ではありません。
ちなみに、パリ市が再建のために用意した500万ユーロ(約6億5000万円)は、寺院の再建ではなく再建に合わせた周辺の道路工事に充てられる予定です。
2024年の再開に全力、観光客の入場は?
再建プロジェクトを監修する役人ジャン=ルイ・ジョルジュラン(Jean-Louis Georgelin)氏は、「2024年までという目標達成はかなり困難」としながら、「大統領が意味する、再オープンがどの程度かによる」と述べています。
ショヴェ主任司祭は、3年後の再開に「希望を持って」おり、教会で礼拝や宗教行事の「再開を心待ちにしています」と述べたものの、「たとえ外観工事が終わっても、内部の修復が完了するのには何年もかかる」と工事関係者から言われているとのことです。
2024年に宗教行事は再開できたとしても、火災の前に毎年訪れていた1000万人の観光客に関しては、「教会内の足組などを見てもらうのは心苦しい」ため、内部の修復完了後の受け入れ再開になるのではないかと見ています。
いずれにせよ、火災以前と同じ数の観光客が気軽に入れる状況になる日が待ち望まれます。
ビデオ《修復工事の舞台裏》(仏語)で、修復状況が詳しくご覧いただけます。
執筆:マダム・カトウ