7月8日(金)、フランスで教員不足が深刻になってきています。昨日7日から夏休みに入り9月の新学期を2ヶ月後に控えた現在も、小中高で約4,000人不足していると発表されています。
2万人の先生が新規採用も、小中高で定員割れ20%
6月に行われた教員試験で、今年も2万人の教員が新たに採用されました。しかし、これは欠員の80%にしか満たず、定員に対して4,000人が不足しています。
フランスの教員不足はいまに始まったわけではなく、昨年も欠員が補充できていない問題はありましたが、新規採用で欠員の94%を補っていました。
つまり今年は過去に前例のない教員不足に陥っています。
教員不足に地域差、パリ郊外イル=ド=フランス、50%が欠員
教員不足は小中高全般にわたりますが、地域により深刻度が異なります。
パリおよびイル=ド=フランス地域圏(Ile-de-France)で不足が顕著ですが、深刻なのはパリ以外の郊外で、実に2人に一人の割合で欠員が出ています。
科目でも格差、数学や国語の先生不足
日本の中学校に当たるコレージュ(collège)では、科目により欠員状況が大きく異なります。
歴史地理(フランスでは歴史と地理を同じ先生が交互に教えます)、体育、生物学(理科)の先生には不足は出ていませんが、古典文学、ドイツ語では50%の欠員が埋まっておらず、さらに物理化学、現代国語、数学の先生も欠員が著しい科目となっています。
フランスでは高校(リセ:Lycée)1年まではすべての生徒が同じ科目の授業を受ける共通科目(troncs commun)制ですが、高校2年から、文系、理系、経済系と3つの専門に分かれます。
そのため今まで高校2年で文系に進んだ生徒に数学の授業はありませんでした。
マクロン大統領「数学強化」公約も、先生不足どうする?
フランスでも世界の例に漏れず、ITやデータ分析など理系の職業の需要増と将来性から、数学教育の重要性が注目されています。
マクロン大統領は5月の大統領選の公約で、高校で文系を選んだ生徒にも数学を「オプションで選択できるようにする」ことをあげていましたが、ただでさえ足りない数学の先生をどうするのかが大きな問題になっています。
「やりがいの欠落」で退職の嵐、組合側「給料安すぎ」
フランスの中高教員組合の代表、ジャン=レミ・ジラール(Jean-Rémi Girard)氏は、「やりがい」の欠落による退職の嵐に直面していると警鐘を鳴らしています。
氏は「魅力ある給与だとは言い難い」ことを理由の一つにあげています。
義務教育で数カ月にわたる「授業の空白」、訴える保護者も
先生の欠勤、欠員が原因で授業ができない科目が出たことで、教育委員会を相手に訴えを起こす父兄もいます。
ジラール氏によると「先生の欠勤や欠員が補充されないまま、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月と長期にわたると、子供はその分の授業を受けられないままになります。その生徒に対し国は教育を与える義務がありますから、親が国を訴えたくなるのは当然でしょう」とコメントしています。
契約社員の先生を大量採用か?ジョブ・デーテイングも
フランス教育委員会では、深刻化する先生不足に対し契約社員の採用で補う方針を打ち出しています。つまり通常教員試験を受け公務員となる学校教員とは別枠で、欠員補充として雇うことなります。
教員不足が深刻な上、既存の教員の欠勤などで「授業の空白」数が多いことが問題になっている、パリ近郊ベルサイユ(Versailles)やディジョン(Dijon)など一部の学区では、緊急に「ジョブ・デーティング」と称する採用説明会が開催されています。
こういったやり方に対し、ジラール氏は「学校側に、なりふり構わない危機的なイメージが出来上がってしまう。頼むからまともな給料を払ってくれ!でないと採用ができない」と現場の焦りを表明しています。
採用が決まった契約社員には8月末に研修が行われることが決まっています。
パプ・ンダイエ(Pap Ndiaye)教育相によると、今年の先生不足は「想定内」で9月には組合側との話し合いでいかに教師の仕事に魅力を感じてもらえるかを話し合うことになっています。
教育相の約束通り、9月1日の新学期には「すべてのクラスに先生が必ずいる」状況になっているでしょうか?
執筆:マダム・カトウ