1月11日(火)、フランス人の朝食に欠かせないクロワッサンですが、新年早々、値上げするパン屋さんがじわじわ増えています。原因は昨年9月頃から始まったバター価格の高騰ですが、バターはパンやケーキのみならず、サンドイッチや料理など多岐にわたり使われているため、消費者のお財布を直撃しそうです。
バター高騰再び、3ヶ月で30%上昇
国立乳業者経済センター(Cniel :Centre national interprofessionnel de l’économie laitière)は、フランスのバター価格が昨年9月から12月のたった3ヶ月間の間に30%値上がりし、もうすぐ1キロ当たり10ユーロ(約1300円/1ユーロ=約130円)と発表、バター1トン当たりの価格が昨年12月には5,002ユーロ(約65万円)に達したことを明らかにしました。
これは2018年の中頃に5,500ユーロ(約72万円)に達して以来の高値となります。
ちなみにバター価格が最も高騰したのは2017年で、この時は一時1トン7,000ユーロ(約91万円)にも達しています。
中国のバター輸入が20%増も、生産量増やせず
高値の原因としてまずアジアからの輸入増が挙げられます。なかでも中国は2021年の1年間で20%もバターの輸入を増やしています。
特にEU加盟国からの輸入増が顕著ですが、2021年のフランスのバターの生産量は42万トンで、「バターショック」だった2017年の40万トンからわずか2万トンしか増えていません。
フランスでの乳製品の生産は単価の高いチーズやクリームに重点を置き、値上がりしても単価が知れているバターの生産は強化されないままになっています。そのため、急にバターの生産量を増やそうにも、原材料となる生乳がバターの製造には回されないのが現状です。
原油高、飼料高で生産量減
次にあげられる原因は、世界のバター生産量(EU、ニュージーランドなど)の減少です。
そして、フランスにおける生産減の理由はいくつかありますが、乳牛の数が2021年の最初の10ヶ月で1.8%減っている事です。
3つ目の原因は、昨年から続く原油高や気候変動による干ばつや水害による飼料高が挙げられます。
飼料代が値上がりすると、酪農家は乳牛に与える飼料の量を減らします。餌が減ると当然牛一頭が出す乳の量が減ってしまします。
ポストコロナの需要増、見誤り
フランスでは2021年の春に飲食店の休業規制が解除され、ようやくレストランやカフェが再開、経済活動も本格化しました。
同時に、コロナ禍でできなかった家族の集まりや友人宅での食事の機会が増え、当然訪問の際にケーキを買っていくといった一般的な消費も行われます。
卸業者によっては、経済活動の再開による需要増を見込んでおらず、注文量を増やすのが遅すぎたた事も価格上昇を招く要因となっています。
新年のお菓子ガレット・デ・ロワ、クロワッサンも値上がり
1月6日の公現祭(Épiphanie:エピファニー)と呼ばれるキリスト教のお祭りの日、フランスでは『ガレット・デ・ロワ』(マジパンを中に挟んだパイ)と呼ばれるパイを食べる習慣があり、この日から2、3週間はフランス中のパン屋さんでこのお菓子が販売されています。
ガレット・デ・ロワの原料の25%はバターの為、値上がり分は販売価格に転嫁され、今年は1切れ当たり10セント(約13円)、店によっては10%も高く販売されています。
フランスパン・パティスリー連盟(Confédération nationale de la boulangerie-pâtisserie française)の代表ドミニーク・アンラクト(Dominique Anract)氏は、「バターだけでなく、砂糖は10%、チョコレートも10%、卵も20%値上がりしている」と嘆いています。
氏によると、フランスの朝食として代表的なクロワッサンやパンオショコラなど、ヴィエノワズリーと呼ばれる菓子パンもバターをふんだんに使うため、店によりますが大体10セント程度の値上げを余儀無くされるでしょう。
スーパーの値上げはこれから、バター欠品の心配は「今の所ない」
街のパン屋がすぐに値上げをしたとしても、多くのスーパーで販売されるバターの値段がすぐに大きく変わることはありません。大手スーパーはメーカー側と1年単位の価格契約を結んでいます。
そのため、今のバター価格高騰が販売価格に反映されるのは、2022年の契約交渉が終わる3月末頃になると思われます。
とはいえ、今の所2017年のような「バターの供給に影響が出ることはない」ですが、価格に関しては少なくとも「今後3ヶ月は高止まりしたまま」になると国立乳業者経済センターは見ています。
執筆:マダム・カトウ