10月29日（金）、毎年恒例となっているパリのシャンゼリゼ大通り（Champs-Élysées）のイルミネーションは、今年は11月21日に点灯され来年１月９日（日）まで大通りを彩ります。ここのところコロナ禍やデモでこの時期の訪問者が激減していましたが、今年はこの期間に1,000万人の人出が期待されます。
「持続可能」「節電」をモットーに、過去４年間同じイルミネーション
今年で４年連続となった今年のテーマ「フランボワィアンス」（”Flamboyance”）はブラシェール（Blachère）社が制作しています。
イルミネーションは毎晩17時から翌朝２時までですが、クリスマスイブの12月24日と大晦日の31日は一晩中点灯されます。
今年も過去３年間と同じ電飾を利用し、総費用は約100万ユーロ（約１億3,200万円/１ユーロ＝約132円）となる見込みです。
これについてシャンゼリゼリゼ大通り運営委員会（Comité Champs-Élysées）のマルク＝アントワーヌ・ジャメ（Marc-Antoine Jamet）氏は、「持続可能」をモットーに「費用の倹約とエネルギーの節約を行う」と昨日の記者会見で発表しています。
４人家族１世帯１年分の消費電力量
凱旋門のあるエトワール広場からコンコルド広場まで全長３kmに及ぶ大通りのうち、ライトアップされるのは通りの両サイドに商店や建物が立ち並ぶ２kmほどになります。
期間中の総消費電力量は23 400（kWh）で、これはアパートに住む４人家族１世帯が１年間消費する電力量に相当します。
「観光客よ再び」１日15万人が目標、デモ、コロナ乗り越え
1980年に開始され、すっかり世界的に有名になったシャンゼリゼ大通りのイルミネーションですが、2018年秋から始まった「黄色いジャケット運動」のデモ隊がシャンゼリゼ大通りを毎週末デモの舞台にし、商店などを破壊するという前代未聞の行為が行われ、物質的な被害と共に、大きなイメージダウンをもたらしました。
2019年１年間、そして2020年の初頭まで続いたこの運動で、一時は「週末のシャンゼリゼは危険」というレッテルまで貼られ、クリスマス商戦時期のシャンゼリゼ大通りは経済的にも大きな打撃を受けました。
2020年３月に入り、新型コロナによるロックダウンで「黄色いジャケット」のデモはなくなりましたが、同時にこの「世界で最も美しい通り」に「人っ子一人いない」状況が続きました。
2020年、ロックダウン中のシャンゼリゼ大通り
昨年もイルミネーションは実施されましたが、世界各地からの入国制限に加えフランス国内も移動規制による観光客不在で、来訪者は「地元パリ市民だけ」という異例の状態でした。
コロナ禍の売り上げ減、H&M旗艦店閉店へ
クリスマスのイルミネーションは、シャンゼリゼ大通りの「世界でのイメージを維持するために欠かせない」ものであり、この大通りが「落ちぶれる」などというのはあってはならないことです。
とはいえ、「この３年間本当に厳しかった」「コロナ禍で年間の売り上げが70％減になった店もあり、ここまで大変になるとは思ってもみなかった」とジャメ氏はこの３年間を振り返っています。
今年の点灯を約１ヶ月後に控えた今月27日、スウェーデンのアパレルメーカーH&Mは、11年間営業していたパリの旗艦店の一つであるシャンゼリゼ大通りのショップを閉店すると発表しています。
９月１日からデコレーション作業、１本の木に５人がかりで400本
今年のイルミネーション設置作業風景
イルミネーションの準備は６ヶ月ほどかかり、設置作業は９月１日から開始されています。シャンゼリゼ大通りの並木は一本一本が登録されており、全部で600本ほどあります。そのうちの400本に今年も電飾が取り付けられます。
作業スタッフは総勢20名で、一本の木にデコレーションを取り付けるのに高所専門のスタッフが５人がかりで作業を行います。
うち２名は木の上部にある高いところへの設置を行い、２名が下の部分、もう一人がガーランドライトと呼ばれる紐状に繋がっているランプが綺麗に丸みを帯びて設置されるよう全体の形を整えます。
ちなみにシャンゼリゼ大通りのデコレーションに使われるガーランドライトは全長80キロで、使用されるLED電球は実に68万個になります。
今年こそ、イルミネーションでさらに輝きを増した「世界一美しい大通り」に繰り出してみたいものです。
執筆：マダム・カトウ
