9月3日(金)、パリのメトロの紙チケットを削減する方向性が決まり、まずは紙のカルネ(10枚綴り回数券)が2022年に完全に廃止されます。そのため今年の10月14日から徐々にカルネを販売する駅が絞り込まれます。
2022年3月末、10枚綴りの回数券(カルネ)廃止
10月14日よりパリ市内100箇所の駅の券売機で、さらに2022年の1月には176の駅の券売機でカルネの販売が終了します。この時点では対人窓口で購入することは可能ですが、3月には全ての駅で券売機でも窓口でもカルネを購入することができなくなります。
ちなみに、それまでに購入した回数券は2022年以降も引き続き使用することが可能です。
回数券、10枚に1枚が未使用
パリのメトロの紙チケット裏面にある磁気ストライプは、スマホや鍵が近くにあるとすぐダメになってしまいます。
そのせいか、年間500万枚ものチケットの磁気がなくなり、窓口で再度磁気化するという処理が行われています。また、10枚に1枚は未使用という状況です。
観光でパリを訪れたことがある人なら一度は遭遇する?光景ですが、地下鉄の改札機にチケットを入れてもブロックされてしまう人をよく見かけます。
こういった人の流れを止めるトラブルも、カード式への移行でかなり解消されるでしょう。
回数券をカードにチャージ、料金にメリット
現在カルネは無料1枚分を含む10枚1セット16.9ユーロ(約2,207円)で販売されており、パリ市内及びゾーン1までが利用可能範囲です。。
パリの地下鉄及びイル=ド=フランス地域圏(Île-de-France Mobilités)の定期券は「ナヴィゴ」(Navigo)と呼ばれ、郊外を含む全5ゾーン有効で現在は約75ユーロ(約9,795円/ 1ユーロ=130.60円)の一律料金で販売されています。
紙製のチケット廃止後は、現在の定期券ナヴィゴと同じく、プラスチックのカード式になっているナヴィゴ・イージー(Navigo easy)を駅の窓口で2ユーロ(約270円)で購入し、券売機などでチケットをチャージします。紙製に対し、カードでチャージすると、カルネ1セットの料金が14.9ユーロ(約1,945円)と割引になります。
定期券は初回にオンラインや窓口での事前登録が必要で顔写真が必要なのに対し、このカード式回数券は駅で気軽に買うことができます。
実はこのカード式の回数券ナヴィゴ・イージーはすでに販売されていますが、存在を知らない人が多くまだあまり普及していません。
[#ConseilIDFM] Île-de-France Mobilités approuve l’arrêt futur de la vente des carnets de tickets t+ sur support cartonné au premier trimestre 2022 dans une optique de modernisation de la billettique des #TransportsIDF et suite aux lancements de Navigo Easy et Navigo Liberté +. pic.twitter.com/Zh58SMoxdo
— IDF Mobilités (@IDFmobilites) April 14, 2021
カード式のデメリットは?
このカード、回数券を買わなくてもチケットは1枚からチャージできます。またカードの購入代金2ユーロに対し、一回分のチケットがチャージされているので損した感もありません。
また、回数券以外に1日乗車券や空港行きのオルリーバス(Orly bus)、ロワシーバス(Roissy bus)のチケットもチャージできるので観光客にも便利です。
1点残念なのは、パリに観光で来る人はメトロの移動が多いため大抵回数券を購入しますが、カード式になると今までのように同伴者や家族と10枚綴りの回数券を買って複数で利用することができなくなります。
使った分だけ翌月払いのナヴィゴ・リベルテ・プリュス
定期券を買うほど頻繁に利用しないものの、定期的に利用する人には、使った分だけ翌月払いのナヴィゴ・リベルテ・プリュス(Navigo Liberté +)もあります。パリ市内の地下鉄のチケットは1律料金で、1枚だけ買うと1.9ユーロ(約248円)なのに対し、回数券と同じ料金の1.49ユーロ(約194円)で計算されます。
定期と違うのは郊外線を利用する場合、ゾーン1までしか使えないことです。
パリ地下鉄公団(RATP)とイル=ド=フランス交通公団(Île-de-France Mobilités)は、こうしたお得なプランを用意することで、カード式への移行を推進したいようです。
スマホの定期券アプリ利用拡大狙う
スマホの盗難が多いせいか、フランスではなかなかスマホの「お財布ケータイ」的な利用が普及していません。
そのため、携帯の定期券アプリを利用する人は増えているもののまだ少数派で、紙の削減からいきなりスマホ利用ではなく、カード式への移行という段階を踏む必要があるようです。
上記の回数券などのチャージは全てスマホアプリ上でも行うことができます。イル=ド=フランス交通公団は、まず紙チケットの廃止によって、カードを購入する手間からスマホアプリへの移行を狙っています。
またカードには10年間の有効期限がありますが、10年後はもうカード式は無くなっているかもしれませんね。
執筆:マダム・カトウ