9月1日(水)、フランスでは新年度がスタートし、フランス労働省(Ministre du Travail)はコロナ対策のプロトコルを新たに発表しました。職場は、コロナウイルスの感染が拡大する前とほとんど同じ状態に戻ります。
9月1日からの新プロトコル発表
エリザベット・ボルヌ(Élisabeth Borne)労働・雇用・社会復帰大臣は9月1日以降に適用する、新たなコロナ感染対策のプロトコルを発表しました。
Le nouveau protocole national qui redonne la main aux entreprises et aux salariés pour définir les règles sur le #télétravail est en ligne.
J’invite tous les employeurs à signer des accords sur le sujet avec les représentants des salariés.
➡️https://t.co/bRHlXh3Od0 pic.twitter.com/XNsrtjdfvI— Elisabeth BORNE (@Elisabeth_Borne) August 31, 2021
本文は20ページに及びますが、いくつか重要な点を見てみます。
テレワークの義務を解除
9月1日より民間企業では、テレワーク勤務を行うべき最低日数の基準は撤廃されます。会社員は上司との相談のうえ、週5日すべてオフィスで働くことも可能になります。
フランス労働省は6月以降、民間企業に対するテレワークの最低日数を軽減していましたが、この規制の効力は薄れるばかりでした。『ル・モンド』紙によると、7月時点でわずか23%の会社員のみが1日以上のテレワークを実施している状況だったということです。
公務員については、最大で週3日はテレワークすることが法律により義務付けられており、これに違反した公的機関には罰金が課されます。
オフィスでの感染対策
オフィスワークの解禁とはいえ、屋内でのマスク着用は依然として義務付けられます。これは、全ての従業員がワクチン接種済みであったとしても同じです。
また、従業員間に1メートル以上のソーシャルディスタンスを設けること、集会や人とのすれ違いを減らすことも従業員に義務付けられます。
さらに、対面会議よりもオンライン会議を優先すること、また、対面会議の場合には、マスク着用や空気の入れ替え、ソーシャルディスタンスを保つ必要があります。
ただし、これらのプロトコルは、仕事場が屋外の場合、仕事部屋が一人ひとりに割り振られている場合、空気の入れ替えなどが可能で使用人数が決まっているアトリエなどの場合には免除されます。
コロナパスポートの提示義務との関係は?
フランスでは8月31日から、公共空間の一部で「コロナパスポート」の提示が義務付けられています。例えばレストランや映画館、美術館、また長距離路線の鉄道などです。これらの場所で働く従業員には、マスク着用などは義務付けられていません。
ただし、従業員に対して、ワクチンを接種したかどうかを問うことや、パスポートを持っているかどうかを勤務の条件とすることは禁止されています。なおTGV内のレストラン、50名以上が参加する社外での講演などでは、ワクチン接種とパスポートの提示が義務付けられます。
また、社食など、大勢が食事するような場所でも、社内であればパスポートの提示は義務付けられません。これは、一般のレストランでパスポートの提示が義務付けられているのとは対照的です。
労働者への配慮
フランス労働省は、以上のようにいくつかの条件を残しつつ、コロナ感染拡大前の労働環境にほぼ同じ状態まで戻すことを目指しています。
なお、以下のように、ウイルス感染を避けたい労働者や、子どもをもつ母親などに対する配慮も行うとしています。
健康上の事情がある従業員への配慮
ほとんどの会社が従業員をオフィスに呼び戻す中、持病などによりウイルスに感染すると問題のある従業員をオフィスで働かせる事業者は、個室を用意する、勤務時間を配慮する、また物理的な予防措置をとることが条件づけられています。
フランス政府は9月15日以降、このように配慮の必要な従業員で、どうしてもテレワークが不可能の場合には、補償措置を講じることとしています。補償を受けるには、病弱であること、ウイルス感染の可能性が高い中にさらされる職務に配属されていること、ワクチン接種が不可能なことの証明などのいずれかを提出する必要があります。
補償措置の内容は、申請者が雇用主に対して、勤務時間を制限することなどを求められるような証明書を発行することです。すでに2020年5月と2021年8月に実施された措置ですが、これらの補償を受けた場合であっても、今回改めて申請が必要になります。
母親に対する配慮
子どもの通う学校の閉鎖などによって、日中に子どもの面倒を見たりテレワークを行うことができない従業員に対しては、フランス政府は大きく二つの支援を用意しています。
一つ目は、通常と同じ給与を得ながら、パートタイムで働くことができるようにする措置です。両親のいずれかのみが、雇用主に申請することができます。
二つ目は、一時的な停職です。自分の子どもがコロナウイルスに感染した場合には、従業員は原則として7日間、停職を申し出ることができます。その間、従業員は国民健康保険による経済的支援を受けることができます(保証期間の消費なし)。
現在、フランスの学校では、ワクチンを接種している場合には濃厚接触者となっても通学可能のため、ワクチンを受けさせていれば上記の支援の対象外となります。
ワクチンを接種していれば隔離なし
従業員がワクチンを接種している場合、コロナ感染者と接触したとしても隔離させる必要はありません。
ただし、濃厚接触が疑われる場合には、政府の定める一般的な手順に従う必要があります。これには、(1)速やかにPCR検査を受けること、(2)陰性の場合は48時間以内に接触した人に結果を伝えること、(3)感染予防措置をとること、(4)自身で健康管理を行うこと、(5)感染者との接触7日後に再度、PCR検査検査を受けること、が含まれます。
1度目のPCR検査検査で陽性の場合には、もちろん出勤停止となり、検査後10日間の隔離と、感染者用の手続きをとることになります。隔離中にテレワークができない場合には、これも国民健康保険から日割りで経済的支援を受けることができます。
執筆あお
参照
フランス労働省 Protocole national pour assurer la santé et la sécurité des salariés en entreprise face à l’épidémie de COVID-19
フランス健康保険 Que se passe-t-il quand on a été en contact avec une personne malade de la Covid-19 ?