「黄色いベスト」ベルサイユへ、国会はマクロン大統領の公約を承認

2018.12.21

ベルサイユ宮殿

「黄色いベスト」運動への対策でマクロン大統領が公約した緊急措置は、本日12月21日の早朝国会で承認されました。大統領の公約を不服とする黄色いベスト運動の一部の代表は、今週末パリのほかベルサイユなど地方都市でのデモ続行を呼びかけています。

 

13時間の討議の末、マクロン大統領の公約が国会で承認される

黄色いベスト運動対策でマクロン大統領が公約した緊急措置は、昨日から今朝にかけて約13時間に渡り国会(Assemblée nationale=下院)で協議した結果、賛成153票、反対9票、棄権53票で承認されました。

承認されたのは、2019年から予定されている、年金への一般社会拠出金(CSG : contribution sociale généralisée)と呼ばれる福祉税の値上げを月2000ユーロ(約25万4千円/1ユーロ=126.99円で換算)未満の受給者に対しては凍結、残業手当への所得税免除、1000ユーロまでの年末特別賞与支給に対する所得税免除ですが、野党は右派左派共々強く反発し、与党内でも財政を著しく圧迫する措置の効果を疑う声があがっています。

 

中途半端な措置に野党が猛反対、クリスマスはロータリーで過ごせ

年金に対する福祉税値上げ凍結により、年金受給者500万人の約75%が恩恵にあずかりますが、野党右派共和党(Les Républicains)は年金受給者全員を対象にすべきだと猛反発しています。

残業手当への所得税免除はサルコジ元大統領が初めて導入し、その後オランド前大統領時代に破棄(マクロン大統領は当時の経済相)されています。今回の免除再開に対し野党左派は新規雇用を阻止すると反対し、右派は雇用主への社会保障費用免除も要求しました。

特別ボーナスの免税に関しては、すでに政府の協力依頼の元、フランス国鉄(SNCF)、パリ地下鉄公団(RATP)、フランス郵政公社(la Poste)をはじめ、フランス大手上場企業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)社、通信大手のオランジュ(Orange)などが次々に特別ボーナス支給を発表していますが、一方で多くの中小および零細企業はボーナス支給自体ができないため、不公平との声が上がっています。

また、期待の大きかった最低賃金100ユーロ(約1万2700円)の値上げは、実際には低所得者への国からの補助金が値上げされ、最低賃金自体が上がるわけではないことなどから、極左の「屈指ないフランス」(La France insoumise)のメランション党首は、「これらの措置はだまし絵みたいなものだ。(大統領は)クリスマスはロータリーで黄色いベストたちとすごす事になるだろう」と強く非難しています。注)

 

「黄色いベスト」明日土曜日もデモ、パリオペラ座、ベルサイユへ

大統領の演説をすでに不服とする黄色いベスト運動の一部の代表は、明日もデモを呼びかけています。

今回の運動の中心人物の一人、エリック・ドルエ(Eric Drouet)氏は「パリはもう終わった、次はベルサイユへ」、とフェイスブック上で明日22日の8時からベルサイユでのデモを呼びかけています。ドルエ氏はフランスの富の象徴を狙い「シャンゼリゼへ!」を呼びかけた人物で、フランス革命を起こすきっかけとなったフランス王家の象徴ベルサイユ宮殿があり、現在も裕福な町で知られるベルサイユに向かっても不思議ではありません。

一方、別の運動代表は「黄色いベスト運動パート6、明日パリオペラ座に10時集合」を呼びかけ、すでに400人が参加を表明しています。

まだまだ続く黄色いベスト運動、今後もその動向が注目されます。ベルサイユ宮殿は、明日12月22日(土)デモを警戒し臨時閉館を発表しています。

注)黄色いベストは燃料税値上げに反対してロータリーなどに待機し車の通行を阻止するため

執筆:マダム・カトウ

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