7月18日(木)、年金制度改革委員会のジャン=ポール・ドゥルヴォワイエ(Jean Paul Delevoye)氏は、フランス年金制度改正案をフィリップ首相に提出します。フランスの有力雑誌、ル・ポアン紙(Le Point)がその概要を公開しています。
就労年数制からポイント制に
現行の一般制度は、被保険者期間つまり保険料を支払った《就労年数を四半期単位で管理》ものをベースに計算されています。新制度案はこれを《ポイント制》とし、就業期間に支払った金額がポイントとして年金額算出の根拠になります。
フランスの年金制度は、被保険者が公務員、民間企業、自営業かにより異なり、合計42種類の制度に細かく分かれています。今回の制度改正の大きな目的の一つは、これらの制度を一本化した《統一制度》の導入でもあります。
ポイント制により、就労者は被保険者期間に自分のアカウントのポイントがどれだけたまったかを確認することができます。また、ポイントは病気や出産による長期の休職および失業保険受給期間にも付与されます。
改革委員会は、新統一制度の2025年導入を目指しており、この年62歳になる1963年生まれの人から対象になります。大統領の4月の公約通り、現在就労中の人で定年まであと5年未満の人は対象になりません。
最低受給年齢62歳、均衡受給年齢64歳を導入
案によると、年金受給年齢は62歳と現状維持ですが、ポイント制度が導入されると均衡受給年齢64歳が設定されます。
ドゥルヴォワイエ氏によると、これは「人々が低い年金額で早く年金生活に入ることを避けるためだ」と説明しています。つまり、均衡受給年齢の64歳にると満額支給を受けられますが、それ以前では減額されるわけです。その代わり、64歳を過ぎても働き続ける場合は増額されます。
年金制度の改革により、フランスの年金制度が赤字状態から抜け出すことが重要です。ポイントの評価額を人口と寿命の兼ね合いをみて設定することで、改革委員会は2025年には赤字脱却が可能になるとしています。
しかしながら、実際には2020年には社会保障制度予算法案が国会に提出されることから、統一基本年金制度への道のりはまだ長いといえます。
一部の優遇策を維持
均衡受給年齢64歳を設定することにより、改定が危惧されていた一部の優遇策、例えば10代などから働き始め、長期にわたり掛け金を払った人が早く年金受給できる制度などは維持されます。
就労年数が短い人も減額なしの受給が受けられる、減額停止年齢67歳制度は、警官や軍人、看護婦(公立、民間に関係なく)などの職業のみ維持されます。
配偶者が死亡した場合に移譲される年金額(70%)も改正後も継続されます。
さらに、就労年数が長いにもかかわらず年収が低い低所得者向けの最低年金額は、大統領の公約により最低賃金の85%が支給されることになっています。
秋の労働組合との協議が焦点
組合との協議は8月末が予定されておりますが、組合側はすでに既存の就労年数制の《収入の最も高かった数年をベースに計算する》といったアドバンテージがなくなること等に懸念を表明しています。また、公務員や国鉄職員、RATPパリ地下鉄職員など、公的部門の被用者への特別制度の維持も争点になる模様です。
正式な法案の公表は、地方選挙が終わる今年の11月以降になる模様です。
執筆:マダム・カトウ