12月4日(火)、フランス政府は来年1月に予定していた燃料税の引き上げを半年間延期することを発表しました。
これは11月からフランス全土で行われていた、燃油価格の高騰に反対するデモ「黄色いベスト運動」(Manifestation des Gilets Jaunes)を受けての決定です。
黄色いベスト運動に動かされたフランス政府
デモのきっかけは11月14日(水)、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領による燃料税引き上げの発表でした。
これに反発したフランス各地の市民が、11月17日、24日、そして12月1日と毎週末にわたって道路の封鎖などを行い、全国的な運動として広がりました。デモによって様々なイベントの中止や公立学校の休校等の被害が出ています。
デモ側との協議は中止
政府はこのような運動を受けても今月まで市民の声に耳を貸そうとはせず、税制改革を推し進めようとしてきました。しかし運動の激化を受け、12月3日にはマクロン大統領をはじめとする首相府でデモへの対策会議が開かれました。
その結果、燃油税引き上げの延期や、デモ運動側との協議が12月4日に開かれることが決定しました。デモ運動者への殺人予告がSNS上で出されたことから協議は中止に追い込まれたものの、政府は方針の変更を発表したのです。
フィリップ首相の発表
エドゥアール・フィリップ首相(Édouard Philippe)は4日、燃料税の引き上げ延期などの措置を発表しました。
具体的には、来年1月に予定されていた燃料税引き上げの6ヶ月間延期や、電気料金引き上げの延期等です。
燃料税の引き上げが予定通り実施されないことで、政府は財源を20億ユーロ(およそ2560億円/1ユーロ128円で換算)失うことになるという試算もあります。政府は今後どのような手段で追加の財源を得るのか、考えねばなりません。
国民の不満は収まらず
増税が引き伸ばされたとはいえ、国民の不満が解消されたわけではありません。政府による「猶予措置(moratoire)」は、「遅すぎであり、今さら意味がない」という批判も出ています。
また、政府の措置に対して「何も変わっていない。われわれが求めているのは裕福連帯税(ISF : impôt de solidarité sur la fortune/マクロン政権は、ISFを緩和する措置を実施しようとしている)への改革だ」と声を挙げ続けるデモ運動参加者もいます。
今回、政府は「黄色いベスト運動」への対処として増税引き伸ばしを発表したに過ぎず、裕福連帯税の緩和は引き続き進める意向でいるためです。
マクロン大統領にとって一連の騒動は、政権運営をも揺るがしかねない大きな痛手となっています。今後どのように国民からの信頼を取り戻すのか、注目されます。
執筆あお