11月9日(火)、昨日8日の新型コロナによる1日の死者が500人を超え、フランスのコロナ第二波もピークに向かっています。10月末からの2回目のロックダウンによる行動制限で、商店や飲食店などが閉鎖され、経済活動に更なる打撃を与えていることから、前回のロックダウン解除後に取った政府の対策に批判が相次いでいます。
第一回目のロックダウン解除後、夏のバカンスが焦点
約2ヶ月に渡った1回目のロックダウンに伴う行動制限は、5月上旬に自宅から100km以内の移動が許可されるなど、段階的に解除され、6月中旬にはほぼ全面的に解除されました。
多くの商店はすぐに営業再開を許可されましたが、劇場、映画館など一部業種の再開は6月後半に持ち越されました。
企業では、継続してテレワークが奨励され、社員を出社させる場合は会社側がマスクや消毒ジェルを用意し、さらに机の間隔を空けるなど、様々な規制が設けられました。
国内旅行を奨励、感染増も追加対策先送り
7月〜8月の夏休み中に行動制限をかけるかどうかが注目されていましたが、フランス人にとって夏のバカンスは「聖域」に近く、また壊滅的となったホテルなど旅行業への配慮からも、目立った制約はありませんでした。
特に、第一波での感染は一部の都市や地域に集中し、地方の多くは感染者が少なかったため、国内旅行が奨励されました。
夏休みの最中、8月上旬から既に感染者が増加しはじめていたため対策が検討されましたが、新たな制約で長期のロックダウンに疲れた国民の不満が噴出することを危惧し、導入には至りませんでした。
観光地、集客減も混雑、警戒心緩く
一部の観光地や市町村では、混み合うビーチでの感染拡大や、感染者の多い都市部からの観光客増加から、ビーチでのマスク着用を義務化したり、日光浴や夜間のアクセスを禁止しましたが、南仏など一部のビーチではほぼ例年の人混みとなりました。
また、好天気に恵まれたせいもあり、レストランなどはテラスや道路の駐車スペースといった屋外に席を設けましたが、多くの店でテーブルの間隔を1メートル以上空けるといったルールが守られておらず、屋外とはいえ観光客がひしめき合っている光景も多く見られました。
マスクの義務化、解除から2ヶ月後
ロックダウン解除の時点では、空気感染は警戒されておらず、マスクがまだ十分に供給されていなかったこともあってか、商店など屋内の公共の場でマスクの着用が義務化されたのは、解除から2ヶ月が経過した7月20日でした。
そして、8月上旬から中旬にかけて感染者がさらに増加しはじめ、飛沫による空気感染が問題になり、8月末〜9月上旬にはほぼ全国的に外出時のマスク着用が義務化されました。
第二波は、ソーシャルディスタンスが守れないフランス国民のせい?
医療関係者は、第二波の急速な拡大の要因として「ソーシャルディスタンスが十分に守られていない」と、長引くコロナ禍に疲れたフランス国民の警戒不足を指摘しています。そして同時に「国民に努力を要求するなら、政府も完璧であるべき」と、最大の要因として、政府の戦略遂行能力をあげています。
1日70万件の検査、追跡、隔離は《絵に描いた餅》?だった
第一回目の3月中旬からのロックダウンでは、国全体の経済活動の8割が停止し、その効果は約2週間で現れはじめ、ロックダウン後半は、専らどうやって解除するかが焦点となりました。
政府は、解除にあたり「検査、追跡、隔離」という方針を打ち出し、1週間で70万件の検査を行い、陽性者に接触したと思われる人を追跡して検査をすること、またホテルなどを借り上げて隔離させることで感染者の新たな拡大を阻止すると発表していました。
テスト結果は48時間以内に出し、陽性の場合、本人が記入する接触者リストを元に、社会保険局かアプリ《STOP COVID》をダウンロードしている人には通知が来て検査を受けに行きます。そして、家族など同居人がいる人は、政府が用意した宿泊施設で自主隔離を行います。
このようにして感染の連鎖を断つことで、感染を抑制するはずでした。
PCR検査数、目標の半分、結果に1週間
ところが実際は、8月の時点では検査場は長蛇の列で、PCR検査は1週間に30万件しか行えていません。
政府は、月末には1週間の検査目標を100万件に増やすと発表しましたが、この頃には人員不足で検査場はパンク状態となり対応出来ていません。
そのため、検査結果に48時間どころか1週間近くかかり、感染の連鎖を断つことができていません。
期待のアプリは稼働せず、自宅以外の隔離皆無
接触者追跡に期待されたアプリ《STOP COVID》は200万人以上がダウンロードしたとはいえほとんど機能しておらず、接触アラートは200件しか送られていません。
また、ホテルなど自宅以外の宿泊施設での自主隔離は、ほとんど実行されていないのが現状です。
執筆:マダム・カトウ