12月5日、OECD(経済協力開発機構)の発表によると、昨年の同機構加盟国全体の社会保障義務負担率は過去最高に達し、中でもフランスがデンマークを抜いて世界一社会保障義務負担率の高い国になりました。
社会保障義務負担率46.2%でフランスが世界一の重税国
OECDのレポートによると、2017年のフランスの社会保障義務負担率はGDP(国内総生産)の46.2%(2016年より+0.7%)に達し、前年まで1位だったデンマークの46.0%(2016年より-0.2%)を抜き、3位のベルギー(44.6%)を引き離して1位になりました。
社会保障義務負担率とは、所得税、法人税、富裕税、付加価値税(消費税)、固定資産税、燃料税、通関税、住民税などの租税、および老齢年金、失業保険、健康保険など社会保障費用の総額のGDPに対する比率です。
OECD加盟国36カ国(注1)の2017年の平均は34.2%と、2016年の34%から0.2ポイント上昇し、1965年にパリでOECDがデータを取り始めてからの52年間で過去最高となっています。1位のフランスは平均値と比較して12%も高く、加盟国中でもっとも負担率の低いメキシコは16.2%となっています。
購買力低下、減税訴え黄色いベスト運動加熱
世界一の重税と物価上昇で、フランス国民の「購買力は低下」しているか?が議論されていますが、統計データでは計り知れない「個人差と地方による格差」が明白になっています。2017年の世論調査では81%のフランス国民が「購買力が低下した」と感じているという結果が出ています。
クリーンエネルギーへの移行を理由に、フランス政府が11月にガソリンへの燃料税を値上げしたことがきっかけで「黄色いベスト(Gilet Jaune)」と呼ばれる市民運動が起こりましたが、マクロン政権発足以来の政策で国民は「購買力が低下した」と不満を募らせていました。当初、平和的デモや通行する車をブロックするなどの活動が一部の町で展開されていましたが、あっという間にフランス全土に広まり、一部では過激派などによる暴力行為も加わるなど、過熱の一途をたどっています。(詳しくは関連記事をご覧ください)
フランス政府燃料税2019年の値上げを見送りも、収拾の見通したたず
「リーダー不在」で始まった黄色いベスト運動ですが、その代表者と呼ばれる数名と政府との交渉も決裂するなど、フィリップ首相は窮地に追い込まれています。一旦燃料税の値上げ延期を発表したものの運動は収まらず、12月5日、ついに2019年の燃料税値上げを予算から取り下げました。
12月8日、パリサンジェルマンの試合もキャンセル
窮地に立たされたフランス政府が譲歩の兆しを見せたものの、当初は市民運動であった黄色いベスト運動に一部の労働組合がストライキで支援を表明、さらに今週末8日(土)も各地で大規模なデモが予定されています。その結果、パリ市内でこの日に予定されていた一部の催しは、シャンゼリゼ大通りで再び暴動などが起こる場合を想定し、延期やキャンセルを余儀なくされています。
パリ16区のパルク・デ・プランス競技場(Parc des Princes)で予定されていたサッカー試合、パリ・サンジェルマン(PSG)対モンペリエ戦も警察の要請により中止になっています。
注1)OECD加盟国リストはこちら
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執筆:マダム・カトウ