フランス政府認定のDELF(Diplôme d’études en langue française)A2は、初心者〜中級者向けのフランス語能力試験です。
この試験を突破するには、自分の身の回りのことについて理解・表現するフランス語力が必要です。
このシリーズ記事ではDELF A2試験の内容や対策をご紹介しています。第6回目の今回は、DELF A2の口頭試験の内容を徹底的に分析します。
(シリーズ第1回では、DELF A2試験の基本情報を、第2回では過去問と参考書の紹介、第3回はリスニング・第4回は読解・第5回は作文の特徴と対策を紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。)
DELF A2の口頭試験
第1回の記事で見たように、DELF A2試験では筆記に加えて口頭試験が行われます。このセクションでは口頭表現(Production orale)の力が試されます。
口頭試験の内容
このセクションでは口頭表現(Production orale)が行われます。約15分の間で3つの課題に答えます。
1問目 試験官の誘導による面接(entretien dirigé):自己紹介をし、試験官の質問に答えていきます。
2問目 1つのテーマにかんして続けて話す(monologue suivi):身の回りのことについて約2分間つづけて話し、試験官からの質問に答えます。
3問目 やり取り(exercice en interaction):試験官とロールプレイを行います。
2・3問目については、6〜8分間の準備時間が与えられます。これは試験の開始直後に与えられ、試験室とは異なる教室に案内されることがほとんどです。
3つの課題は、似ているようで全く異なる能力を試すものです。それぞれの特徴を理解し、対策に役立てましょう。
1問目の内容と対策
例年、試験室に入ったらすぐに約1分半の自己紹介を求められます。
自分についてだけでなく、家族、友人についてや、自分の勉強・仕事、好みについて簡潔に話します。
おすすめの対策
名前・性格・職業・勉強内容・好きなものについて話す基本的な表現を確認しておきましょう。
例えば動詞 aimer(好きである、好む)のあとにつづく名詞や動詞はどのような形が適切でしょうか?
1.名詞を続ける場合 →冠詞に注意!
可算名詞の場合 J’aime les chiens.(犬が好きです)/J’aime les plats japonais.(日本の料理が好きです)
不可算名詞の場合 J’aime la cuisine française.(フランス料理が好きです)/J’aime le poulet.(鶏肉が好きです)/J’aime la Suisse.(スイスが好きです)
無冠詞の場合 J’aime Bruxelle.(都市名:ブリュッセルが好きです)
2.動詞を続ける場合 →動詞は不定詞(=辞書の形)で!
J’aime danser. (踊ることが好きです)/J’aime faire du foot.(サッカーをするのが好きです)/J’aime jouer au piano.(ピアノを弾くのが好きです)
以上のような表現はどれも、スラスラと言えるようになっておきたいものばかりです。
2問目の内容
2問目は準備時間が与えられ、身の回りのことについて、より長く話します。その後は試験官との質問応答があります。過去問にあるテーマは、以下のようなものです。
―(住居)どこに住んでいますか? 自宅はどのようですか。自分の住んでいる地域の好きなところと好きではないところ、その理由を話してください。
―(友人)親友はどのようですか。一緒に何をしますか?
―(飛行機)飛行機に乗ったことがありますか? 誰と、どこに行くためですか? 一番最近、飛行機に乗ったときのことを話してください。
―(本)読書は好きですか? どんなジャンルの本が好きですか? それはなぜですか? お気に入りの本について話してください。
内容を自分からふくらまそう
質問に答えることはもちろん、その内容をふくらませて話すことが大切です。
例えば「住居」について、自宅の部屋や周囲の環境などを話すだけでなく、それらに関連する話題を自分から話してみましょう。自宅に友人を招いた、DIYをした、なぜその住居・地区を選んだか…などです。
話せることがないときは
過去問にあるテーマを見て、「読書はあまり好きではないな…」「最近まったく飛行機に乗っていない…」など、ネタがない!と困ってしまう方もいるかもしれません。
そのようなときは「なぜ読書が好きではないか」「なぜ最近、旅行に行っていないのか」「次に読書・旅行するとしたら…」と関連する話題を探してみましょう。
またテーマを少し抽象化してみると話しやすくなります。例えば「読書」→文化的な趣味(映画や雑誌など)、「飛行機」→乗り物(車や自転車、あるいは徒歩)と考えを広げてみるのです。
そうすれば「私は読書は好きではないが、映画なら…」「最近は飛行機に乗っていないが、ドライブなら…」と話し続けることができるはずです。
3問目の内容と対策
3問目は、特定の状況を想定し試験官とロールプレイを行います。
過去問では「住居探し」「パソコンの購入」「交通事故への対応」「採用面接」などがあり、さまざまなテーマが用意されています。
ここでは会話の目標を達成するための、相手に情報を求めたり、依頼・交渉したりする力が問われています。
公共の場での会話
多くの場合は、公共の場(不動産屋・電気屋などの店、道路や駅、面接など)でのやり取りが設定されています。
過去問ではvousをつかった会話もtuをつかった会話も出題されていますので、どちらにも対応できるように準備しておきましょう。
相手に働きかけるためのさまざまな表現
まず、相手に情報を求める場合の表現です。
Pourriez-vous / Pouvez-vous me renseigner sur… ? (〜について教えていただけませんか?)
Je voudrais / J’aimerais bien des renseignements sur….(〜についての案内がほしいのですが。)
Pourriez-vous / Pouvez-vous me donner des informations sur… ? (〜について情報をくださいませんか?)
Je cherche des informations sur…. (〜についての情報を探しています)
次に、相手に依頼する場合の表現です。
Je voudrais / J’aimerais bien m’inscrire à….(〜に登録したいのですが。)
Je voudrais / J’aimerais bien savoir la procedure pour….(〜するための手続きを知りたいのですが。)
Je voudrais / J’aimerais bien votre aide pour….(〜するために助けていただきたいのですが。)
Pourriez-vous / Pouvez-vous m’aider à… ? (〜するのを助けていただけますか?)
以上は一例ですが、会話の目標に沿ってさまざまな表現を身につけ、使い方を確認しておきましょう。
まとめとアドバイス
DELF A2の口頭試験の課題は自己紹介、身の回りのことにかんする説明、ロールプレイと盛りだくさんです。まずは今回の記事を参考に、ご自身で過去問に取り組んでみてください。
一部の課題はB1試験ともかぶっており、レベルは異なりますが参考にできる部分も多いです。よろしければB1試験対策シリーズのこちらの記事(リンク)も参考にしてみてください!
なお本シリーズの過去問分析は、フランス国民教育省が公開している過去問(リンク)を参照しています。
時間や形式などは変更される可能性があります。受験生の方は最新の情報をチェックすることをお忘れなく。
おわりに
今回でDELF A2試験シリーズは終了です。もちろん語学に終わりはありませんが、DELFは一度合格すれば一生もの!
DELF A2試験対策をきっかけに、フランス語の第一関門をマスターしましょう。
執筆あお