フランス的思考を垣間見る?フランス語のことわざや慣用表現

2023.10.03

日本と同様に、フランスにもことわざや慣用表現があります。これらは、人間が日々の生活の中で観察したり経験したりして形成されてきたもの。フランス語を習得するうえで有用なフランス語話者の思考回路が垣間見えてきます。今回はそういったフランス語のことわざや慣用表現をご紹介します。

 

日本語と同じ発想のことわざ

洋の東西や文化・言語は違えど同じ人間のこと、似た発想の表現はよく見られます。例えば「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、フランスでは「On ne fait pas d’omelette sans casser des œufs.(卵を割らない限りオムレツは作れない)」といいます。「猫に小判」は「donner de la confiture aux cochons(豚にジャムをやる)」となります。

ことわざのたぐいではないかもしれませんが、「jeter l’argent par la fenêtre(窓からお金を捨てる)」という表現は日本語の「お金をどぶに捨てる」とほぼ同じ意味。このように日本と発想がよく似ていて、日本人でも親しみやすいものが多くあります。

また「faire d’une pierre deux coups(ひとつの石で二打する=一石二鳥)」や「Rome ne s’est pas faite en un jour.(ローマは一日にしてならず)」など、日本に輸入されすっかり根付いているものもあります。物事のとらえ方に相通じるものがあるからこそといえるでしょう。
(英国のことわざを輸入したとされていますが、元はフランスのことわざであったとも言われています)

他には「tirer / faire / bâtir des plans sur la comète(彗星の上で図面を引く/彗星の上で計画を立てる/彗星の上に建築をする)」ということわざがあります。彗星の上で図面を引いたり建築したりはできないこと、彗星は短期間しか現われないのにその上で緻密で長期的な計画を立てたりするのは無理があること、また彗星は凶兆とも言われるがその動きから未来を予測するのは不可能なこと…などなどの理由から「非現実的な計画をたてる」「できないことをやろうとする」といった意味を持ちます。これは19世紀後半に大彗星が突然現われ当時話題なったことがあり、その時代に生まれた言葉だそうです。日本でいえば「絵に描いた餅」などが近いです。

 

日本語的発想では理解しにくいことわざ

一方、日本語に直訳したら日本人にとっては違う意味になりそうなものもあります。

例えば「mettre l’eau dans son vin(ワインに水を注ぐ)」と聞くと、日本語的発想では「水を差す」「質が落ちる」などネガティブな発想に流れそうです。ですが実際は「濃いものを薄める」という視点から「性格が丸くなる」「野心を抑える」「控え目になる」といった意味になるようです。

また「C’est blanc bonnet et bonnet blanc.」は、直訳すると「それは白い帽子と白い帽子みたいなものだ」となり日本語としては意味が不明です。「blanc(白い)という単語がbonnet(帽子)の前に付こうと後ろに付こうと白い帽子の意味だ」ということで、日本語では「五十歩百歩」や「どんぐりの背比べ」に近い意味を持ちます。フランス語では形容詞が名詞の前にも後ろに付くことを利用した、おもしろいことわざではないでしょうか。

 

フランスらしい発想のことわざ


フランスらしい発想だな、と思わせる表現もあります。特に有名なのは「C’est la vie.(人生そんなもの)」でしょう。何か面倒なことが起こっても「C’est la vie.」と言われると、まぁそうか、と思ってなぜか納得してしまいます。

仕事しているとよく聞くのが「La nuit porte conseil.(夜が助言を運ぶ)」という言葉です。「一晩寝たら解決策が出てくるよ」という前向きながらどこか他力本願的な考え方は、「C’est la vie.」にも通じるフランスっぽい発想だなと思います。

他にも「Qui vivra verra.(生きていたら分かる)」は、「結果はそのうち出てくるよ」といった意味で、やはりよく似た発想が根底にあるように思います。

また「Il est urgent d’attendre.(今の急務は待機すること)」という言葉を聞いた時は、私は「急がば回れ」を想像しました。しかし実際は「切迫した状況であっても情報がない中で動くと無駄になるだけなので今は待機が最善だ」といった意味になるそうです。どちらも切迫した状況にあるときほど落ち着いて行動することが重要と言ってはいますが、日本語の「回る」に対して「待つ」のがフランスらしい発想だと思います。

他にも、何でも揃っていることや、成功することも失敗することも両方ある、ということを表すことを「Il y a à boire et à manger.(飲み物も食べ物もある)」と言いますが、食べ物と飲み物であらゆる物を指してしまうあたりもフランスらしくて面白いなと思います。

 

半分冗談で使う表現

ことわざには分類されないかもしれませんが、ことわざ的に使われるフレーズでフランスっぽい発想だなと思わせるものもいくつか紹介します。

仕事の同僚と話していると「Doucement le matin pas trop vite l’après-midi.(朝はゆっくり午後も急がず)」という言葉が良く出てきます。急ぐな焦るなという意味ではあるものの、半分冗談で午前も午後もゆっくりしよう、という意味となります。

また、これは一般に浸透しているのか分かりませんが、何かを尋ねたときに「Si Dieu le veut.(神の思し召しがあれば)」と返す人がいます。これはアラビア語の「Inshallah / إِنْ شَاءَ ٱللَّٰهُ (インシャアッラー)」(アッラーの神がお望みならば)という表現をフランス語に直訳したものです。アラビア語では「Yes」の意味で使われることも多いですが、フランス語になると半分冗談で文字通り「神の思し召し次第」という意味になってしまうようです。

 

まとめ

人間の生活の中から自然と生まれてきたことわざや慣用表現は、その言語が話される環境や文化を反映していると思います。毎日使うものではなくても、いくつか有名なものを知っていると、フランス語話者のメンタリティや発想を知る助けになり、さらにはフランス語習得にも役立つのではないかと思います。

執筆 Takashi

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