8月24日(火)、フランス高等教育省(Ministère de l’Enseignement supérieur, de la Recherche et de l’Innovation)のフレデリック・ヴィダル(Frédérique Vidal)大臣は、9月からの新学期、大学の授業を100%対面式で行うことを発表しました。
新学期にむけたコロナ対策
フランスの高等教育機関では、9月13日に新学期を開始します。
ヴィダル高等教育大臣は、8月24日の『ル・パリジャン』誌へのインタビューで、7月30日付けで同省が発表しているコロナ対策のプロトコルに準じた方針を発表しました。 大臣は、新学期から「できる限り通常通り」授業を行うことを強調しています。
パーテーションなし
教室内には、パーテーションなどを設けず、教室の収容人数を最大に使い、対面授業を実施します。学生間のソーシャル・ディスタンスも設けません。
その代わりに、マスクの着用や、空気入れ替え、また使用済みの場所の消毒などは実行します。
教室から学生があふれる場合には、教育機関の判断により、教室を増やすことや、使用教室を変えるなどの措置をとるとのことです。
パーテーションの設置は、できるだけ多くの学生をキャンパスに取り戻したい大学側にとっては大きな課題となっていました。しかし、今回の発表により、大学側の負担は多少軽減されたといえそうです。
感染者が見つかった場合の措置
同一の教育ユニット内で、7日連続でコロナへの感染者が見つかった場合、ワクチンを接種済みの学生に対する隔離措置は行われません。
一方、ワクチンを未接種の学生については、コロナ陽性の場合や、濃厚接触の場合には、7日間の隔離措置を取ります。その間、教育機関は遠隔による教育を受けることができるように体制を整えます。
また、医療保険一次金庫(Caisse primaire de l’assurance maladie, CPAM)は、陽性者や濃厚接触者のトラッキングを実施するほか、政府は250万回分のPCR検査キットを新学期に合わせて教育機関に配布する計画です。
コロナパスポートは義務付けなし
フランスではさまざまな意見が出ている「コロナパスポート」ですが、対面授業への出席に対して、パスポートの提示は義務付けられません。
しかし、イベントなどをキャンパス内で開催する場合に、提示を義務付ける可能性があります。
例えば、学生団体が主催する新学期パーティや、授業外で実施し、一般も参加できるような文化・スポーツ関連のイベントなどが対象です。また、50名以上が参加する研究集会やゼミナールも対象となります。
18-24歳のワクチン接種率、80%超え
ヴィダル高等教育大臣は8月21日、18歳から24歳までの80%が少なくとも1回のワクチン接種を終えたとTwitterに投稿しました。現状では2回とも接種を終えた若者が66%のところ、新学期の開始までに80%の学生が2回とも接種を完了する見通しです。
Notre jeunesse est responsable et exemplaire : 80% des 18/24 ans ont déjà reçu au moins une dose de vaccin! Il faut aller encore plus loin. La vaccination est la clé pour une #Rentrée2021 réussie : les étudiants pourront bénéficier de la vaccination sur les campus. pic.twitter.com/qDAPlEIAmt
— Frédérique Vidal (@VidalFrederique) August 21, 2021
ワクチン接種キャンペーン
新学期から、大学などの主要キャンパスには、ワクチン接種会場を設けます。管理は地域圏レベルで設置されている保健機関(Agence régionale de santé, ARS)が行います。
政府のプロトコルはすでに、9月から迅速にキャンパス内でのワクチン接種キャンペーンを行うため、ポスターを貼るなどの措置に言及しています。
留学生は社会保険に加入
国外からの留学生受け入れを行っているフランスでは、外国人学生も通常通り授業に出席することとしています。ただし感染レベルの高い国からくる学生に対しては、渡航前に医療保険(CPAM)に登録する必要があります。
また、外国人学生に対しても、フランス人学生と同じようにワクチンを接種する体制が整えられます。
新学期にかかる費用への支援
フランスの学生労働組合は、コロナ感染拡大による経済不況などの影響で、新学期に学生にかかる費用が昨年よりも2400ユーロ上昇したことを指摘しています。
この「費用」には、とくに新学期にかかる通信費や食費、地域によっては家賃、教材費や文具費などと、毎月かかる固定費が含まれます。
経済的な問題を抱える学生、70%
学生労組Fageが実施した調査によると、コロナ感染拡大から1年を経て、25歳以下の学生の72%が経済的な問題を抱えていると明らかになっています。
これに対し学生労組は、奨学金の支給額の引き上げが十分でないとして、支援学の見直しや、新学期に向けた新しい支援金の設立を求めてきました。
330万ユーロを投入
フランス政府はこれを受けて、社会的条件に照らし奨学金の支給額を見直しました。奨学生や経済的に弱い立場の学生に対する1ユーロで食事を提供する仕組みは維持されます。一方で、大学への登録料や家賃は据え置きとなっています。
全体では、330万ユーロが学生への社会的支援に投入される予定です。
執筆あお
参照
FAGE (Fédération des Associations Générales Etudiantes) HP