7月28日(水)、フランス国民教育省(Ministère de l’Éducation nationale, de l’Enseignement supérieur et de la Recherche)はホームページ上で、9月からの新学期、中学校と高校でコロナ感染が起きた場合、ワクチン接種を終えていない生徒は登校ができなくなるという方針を発表しました。
フランスでは現在、ワクチンの摂取を証明する「コロナパスポート」の適用範囲を拡大するなど、ワクチン摂取率を上げるための施策を推し進めています。今のところ、公立学校の生徒に対してワクチン接種は義務付けられていませんが、生徒間の公平をどのように保証するのか、議論が行われています。
2021/22年度から、学校でのコロナ感染対策
国民教育省によると、9月から始まる新学期においては、中学校と高校でコロナ感染が発覚した場合、ワクチンを摂取していない生徒は7日間、自宅から遠隔授業を受けることになります。一方、ワクチン接種を済ませた生徒は、教室で授業を受け続けることができます。
小学校ではこの方針は適用されず、一律休校となります。
4段階
コロナウイルス感染について、国民教育省は2021/22年度から、4つの段階の「プロトコル」に沿った対策を講じるとしています。「レベル1(緑)」が最も緩く、「レベル2(黄)」、「レベル3(オレンジ)」、そして「レベル4」(赤)が最も厳しい措置です。
ジャン=ミシェル・ブランケール(Jean-Michel Blanquer)国民教育大臣は、9月の新学期には「レベル3(オレンジ)」あるいは「レベル4(赤)」の措置が適用されるとの予測を示しています。
新方針への意見
以上の方針について、教員、保護者、学校機関からさまざまな批判が行われています。
教員の意見
高校・中学などの教員組合(Le Syndicat national des lycées, collèges, écoles et du supérieur, SNALC)は、教師が必ずしも生徒全員のワクチン接種の状況を知り得ているわけではないと主張しています。
また、摂取状況が分かったとしても、生徒ひとりひとりに、「接種済みだから登校してよい」「接種していないから自宅にいなさい」という指導は果たしてふさわしいか、という懸念も示しています。
保護者の意見
保護者も、この方針に対する問題点を指摘しています。例えば12歳の学生は、現段階でワクチン接種の対象になっていません。中学校には12歳の生徒も含まれるため、一律にワクチン摂取の有無で生徒を区別することは適切な措置なのか、疑問視されています。
学校がコロナ対応に迫られて2年目に入り、保護者たちは生徒間に学習機会の公平が保たれるよう、努力してきました。今回の新方針のように、登校できる生徒もいれば、遠隔授業を受けなければならない生徒もいるような状況で、どのように教育の公平を保つことは難しいと考えています。
左派の保護者連盟(Association de Parents d’élèves, FCPE)は、新方針によってフランス政府は、ワクチン接種をさせるかさせないかについて、結局のところ保護者に責任を追わせていることを非難しています。
学校機関の意見
全国中等教員組合(Syndicat National des Enseignements de Second degré, SNESFSU)によれば、4段階のコロナ対策は学校現場での現状に即したものではありません。
例えば、換気をするための人員を雇用するなど、プロトコルを遵守するには新たな人員の確保が必要です。
ブランケール教育相は「内申点を重視する成績評価」の方針などを発表していますが(関連記事はこちら)、このようにコロナ対応に現場が追われるなかで、本当に改革を実行できるかは不透明なままです。
執筆あお
参照
フランス国民教育省 Année scolaire 2021-2022 : protocole sanitaire et mesures de fonctionnement [2021/07/29]