フランス政府、パリ3回目のロックダウンを躊躇する3つの理由

2021.03.16

パリロックダウンを躊躇する理由

3月16日(火)、フランスの1日の新規感染者数は過去1週間平均で24,000人、昨日の死者数は333人、現在の入院患者数は25,000人、その内4,219人が集中治療室に入院中という深刻な状況が続いています。特にパリを含むイル=ド=フランス地域圏(île-de-France)では、病床稼働率はすでに100%に近づくなど危機的な状況に陥っています。それにもかかわらず、政府はフランス最大の経済圏への再ロックダウン導入を躊躇しています。

 

感染率の高いパリ郊外7県とパリ市、切ってもきれない関係

イル=ド=フランス地域圏はパリ市とその他7県で構成されていますが、中でも北部のセーヌ=サン・ドニ(Seine-Saint-Denis)県は住民10万人に対する感染者数が498人と全国一感染率が高く、ロックダウンの基準とされている400人を優に超えています。

また、フランス国内で最も感染率の高い上位10県の中にイル=ド=フランスの6県が含まれていますが、他の地方都市ですでに導入済みの「週末ロックダウン」が未だに導入されていません。

パリ周辺地域の住民はパリ市内で働く人が多く、またパリ市からこれらの地域へ働きに行く人も多いことなど、お互いに切ってもきれない関係であるため、パリ市内とその周辺地域は同様に対処していく必要があります。

確かに地域全体でみると10万人中の感染者数は391人と400人をわずかに下回っていますが、地域内の病床逼迫のため数週間前から重傷患者の地方への移送が始まっており、医療関係者は対策強化を訴えています。

人口1200万人超、フランス経済圏の牽引車止められない

イル=ド=フランス地域圏の人口は現在12,174,880 人で、これは全人口の18.3%に当たります。一方、この地域が占める面積はわずか1.9%であることから人口密度の高さがうかがえます。

また国全体の雇用における21,7%、フランスのGDPの4分の1を占めており、フランスを社会的にも経済的にも牽引している地域であると言えます。

このイル=ド=フランス地域圏をロックダウンするということは、ノルマンディー地方の人口88000人の小都市ダンケルクや人口34万人のニースのそれとは訳が違い、国全体への影響は計り知れないものがあります。

 

「週末ロックダウン反対」の陰に、22年大統領選の政治色チラリ

現在検討されているのは「週末のみのロックダウン」であることから、経済的な影響はさほど重大ではないと見られています。

しかしながら、過去2週間パリ市長で野党左派のアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)、イル=ド=フランス地域圏議会議長で野党右派のヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)両氏は、この案にそれぞれ反対する発言を繰り返しています。

パリ市内の人口は218万人ですが、人口密度は欧州一高く、1平米あたり20,750人、住民一人当たりの面積は20平米以下とフランス国内で最も狭くなっています。

イダルゴ市長からは、現在の夜間外出禁止にくわえて市民に不人気な週末ロックダウンを追加する案に関し、「平日は働くだけなのに、週末に散歩する権利をもパリ市民から奪う」「非人間的」といった有権者を意識した発言が見られます。

それぞれ左派社会党(PS : Parti socialiste)、右派共和党(LR : Les Républicains)に所属する両者は、共に2022年大統領選挙への立候補に野心を燃やしていると言われています。政府は慎重な対応を取っているだけに、裏にはこういった政治的要因があると一部のメディアでは報道されています。

とはいえ、ここ数日の深刻な感染拡大状況から、右派のペクレス氏は「やむを得ない状況になった場合は反対しない」と、コロナ対策を最優先する意向を示しています。

 

どうせパリ市民は逃げる?から

フランス国立統計経済研究所(インセ:Institut national de la statistique et des études économiques)が通信会社オランジュ(Orange)社が提供する匿名データを元に分析したところ、昨年3月中旬からの最初のロックダウン中、パリ市民の11%がパリ20区内から地方に逃亡?しています。

この数字にパリで住民登録がされていない人を加えると、実に23%の人がロックダウン中に窮屈なパリを脱出していることが分かります。

感染者の多いパリ、イル=ド=フランス地域圏から地方に人が流出することで地方への感染拡大が広がり、元々医療施設が少ない地域の病床を逼迫させる可能性を秘めていることも、この地域のロックダウンに政府が慎重になっている理由のようです。

執筆:マダム・カトウ

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