ロックダウンで激増したフランス人の貯蓄、いかに使わせるか?

2021.03.12

フランス人の貯蓄コロナで激増

3月12日(金)、2020年3月の最初のロックダウンから1年が経ち、その間2回目のロックダウンを経て現在18時以降の夜間外出禁止が続くフランスでは、今年の年末までに約2000億ユーロ(約25兆9931億円/1ユーロ 円)も個人の貯蓄が増えると予想されています。「コロナ後」の素早い景気回復に向け、いかにこの「眠っているお金」を有効に使わせるかが政府の課題となっています。

 

お金を使うことがないから貯金に、ロックダウンで500億ユーロ

第一回目のロックダウンでは3月から5月の2ヶ月間、生活必需品以外全ての商店が閉まり、学校閉鎖、通勤も禁止、企業もテレワーク以外は経済活動を行なっていませんでした。

家に閉じこもることを強いられたフランス人のとった行動は2つに分かれ、一方はなんとかそれまでの生活レベルを保とうと、オンラインを駆使してお金を使い続けた人で、レストランが閉まっているなら宅配で注文したり、家の中で楽しめる新たな趣味や娯楽、DIYなどを行った人たちです。彼らはロックダウンが解除になると、週末は近場に旅行に出かけ、夏には国内旅行で消費を続けました。

そしてもう一方は、レストランにも行けず旅行もできず、退屈だが諦めてその分貯金を増やした人たちです。彼らは、昨年の3月から8月までの間に500億ユーロ(約6兆4990億円)もの貯蓄を増やしています。

 

富裕層は1万ユーロ、低所得層でも218ユーロ貯金、年末には2000億ユーロに

昨年10月末から再びロックダウンとなり、通勤は許可され学校も再開しましたが、レストランやカフェ、生活必需品以外の商店が再開したのは12月頭にすぎず、クリスマス商戦になんとか間に合った時期でした。クリスマス休暇中の家族の集まりについては人数が制限され、期待されたスキー場のオープンは見送られました。

行き場を失ったお金は貯蓄に回り、フランス人の貯蓄額は昨年末に更に膨れ上がりました。

今年に入っても商店の営業時間は18時までと制限され、変異種ウイルスの感染拡大で飲食店の再オープンは見送られ、フランス人の海外への渡航も制限されています。

フランス国立銀行(Banque de France)は、このまま貯蓄が増え続けると約2000億ユーロの貯蓄がフランス人の口座に眠ったままになると予想しています。

経済紙レゼコー(Les Echos)によると、ロックダウン中に富裕層が貯めたお金は一人当たり約1万ユーロ(約130万円)で、最も収入の低い層でも218ユーロ(約28000円)貯蓄したと発表しています。

 

政府「まずは貯めたお金使って」

経済・財務相ブリュノ・ル・メール(Bruno Le Maire)は、1000億ユーロ(約13兆円)を投じる「コロナ後経済再建プラン」の準備を行っています。

しかし、公的資金を注入する前に、この巨額の貯蓄を実体経済つまり物やサービスや、企業への直接投資に使わせることで、コロナ禍で壊滅的となった経済再生を図ろうと、その対策案を検討しています。

コロナ禍で困窮する若い層の支援、与党「減税」野党「増税」で対立

ル・メール大臣が有力視する対策として、コロナ禍で最も影響を受けている働き盛りの若い層への生前贈与があります。

現行のシステムでは、親から子への資産贈与非課税額の上限は10万ユーロで、現金贈与は31,865ユーロ(約414,000円)は15年に1回可能です。祖父母から孫へは現金贈与のみが2回可能です。

この額が少な過ぎると、ル・メール大臣および与党は非課税額を増やす提案をしていますが、野党特に左派を中心に反対の声が上がっています。

野党、富裕層へ「コロナ課税」で格差是正を

左派は、数ヶ月前から富裕層への「コロナ特別税」の課税を訴えています。これを財源に、就労連帯手当(RSA: Revenu de solidarité active)の支給を18歳から可能にすることが目的です。

ランド県(Landes)の議員で社会党のボリス・ヴァロー(Boris Vallaud)は、「18歳から国の援助を受ける癖をつけるのは良くないと言った批判がされるが、18歳から富裕層の子息が親や祖父母の援助を受けることについては非難されないというのは不公平ではないか?」と、「資産運用」で暮らす富裕層と貧困層の格差は、コロナ禍でさらに深刻になると警鐘を鳴らしています。

執筆:マダム・カトウ

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