5月12日(火)、フランスの新型コロナウイルス による死者は26,643人となりましたが、入院患者は減少を続け、集中治療室の患者に至っては2712人とピーク時の7000人から大幅に減少しています。政府は予定通り、昨日11日、3月中旬より55日間続いたロックダウンの段階的解除を開始しました。まずはカフェ、レストランを除く商店の営業が許可され、本日より小学校、幼稚園が再開します。
パリ郊外からの列車は間引き運転で大混雑、市内の地下鉄はガラガラ
外出禁止期間中は通常時の3割程度の運行だったパリ地下鉄および郊外列車は、ロックダウン解除に伴い、11日より7割が運行されています。しかし現在のところパリ市内に302ある駅のうち、60駅が閉鎖されています。
また、朝6時半〜9時半と夕方4時から7時までの地下鉄の利用は、通勤ラッシュ時間帯に当たるため、雇用主の証明書を持参している通勤客に限られています。
解除初日の昨日はパリ市内の地下鉄は概ねガラガラだったものの、郊外からの列車は大混雑となりました。
そのため、イル=ド=フランス地域県知事(Présidente du conseil régional d’Île-de-France)のヴァレリー・ペクレス氏(Valérie Pécresse)は、パリ交通公団(RATP)およびフランス国鉄(SNCF)に対し、政府がロックダウン解除の次の段階としている6月2日より平常運行に戻すことを要求しました。
テレワーク続行で利用者激減
昨日より多くの商店や企業が営業再開していますが、学校が再開していないため子供のいる労働者は政府の補償を受け(給与の84%)休業している人も多くいます。また、可能な限りテレワークを続行することが奨励されています。
そのせいか、パリの最も大規模なオフィス街で通常180万人が通勤するラデファンス地区(La Defense)で昨日下車した利用客は、わずか4万人でした。一部の列車が混雑していても、利用客全体は激減している事から、パリ交通公団およびフランス国鉄は増便に慎重な姿勢をみせています。
公共交通機関の利用にはマスクの着用が義務となりましたが、初日の利用客の95%はルールを守っていたようです。
パリの河岸沿いで飲み会多数、警察出動
昨日の日中の最高気温は15度前後と寒い一日だったにもかかわらず、パリのセーヌ川河岸やサンマルタン運河沿いには多くのパリ市民が友人同士で出かけていました。
現在、カフェやレストランが閉まっているせいか、中には飲み会を開いているグループもあり、また川沿いに密接して座っている人も多いことから、警察が出動して解散させました。
公道での飲酒が禁止に
これを重くみた内務大臣クリストフ・カスタネール氏(Christophe Castaner)は、パリ警視総監に河岸での飲酒を禁止するよう指示し、昨日夜の発表でパリ警視庁は《公道での飲酒を全面的に禁止》しました。
警視総監は「外出禁止解除初日からこのような措置を取らなくてはならないことを遺憾に思うが、各々が社会的距離を取ることを強制ではなく義務だと思って欲しい」と、強く訴えました。
学校再開、まずは小学校、幼稚園から
今日から小学校、幼稚園が再開します。
学校側は、教室の机を1メートル以上離したり、給食を教室内と食堂に分けたり、休憩時間を時間差で取るなどの対策をしていますが、低学年の児童がお互いに距離を保つなどが簡単ではないことから、学校によっては再開しないところもあります。
同じく感染者の多いイタリアやスペインなど9月まで学校を再開しない国もある中で、フランスの学校再開は賛否両論があり、事前の調査で父兄の5割は子供を学校に行かせないと答えています。
しかしながら、パソコンがない、インターネット環境が整ってないなど、ロックダウン中にオンラインで勉強する環境が整っていない家庭も多く、全体の約4〜10%の子供達が勉強するのやめてしまっています。
政府は「脱落者」を出さないために学校再開は急務とみています。また、経済活動の正常化を目指すため、日中子供がいるせいで就業できない労働者を一刻も早く職場復帰させる事も、再開を急ぐ大きな理由となっています。
感染者の少ない《グリーンゾーン》では18日から中学再開
フランスでは、各地域を感染者数や病床の逼迫状況によってそれぞれリスクが高い順にレッドゾーン、オレンジゾーン、グリーンゾーン呼んでいます。
パリおよびイルドフランス地域圏(Île-de-France)や、フランスで最初のクラスターが発生したグラン・テスト地域圏(Grand Est)など東フランス全域は現在もレッドゾーンに指定されています。
グリーンゾーンでは今月18日より中学校の再開が可能になります。再開するかどうかは、各地方自治体および校長の判断に委ねられています。
執筆:マダム・カトウ