ノートルダム大聖堂再建で論争 黄色いベスト運動にも飛び火

2019.04.22

15日(月)夜に発生した大火災で屋根と尖(せん)塔が崩落したノートルダム大聖堂(La Cathédrale Notre-Dame de Paris)の再建のために寄せられた寄付金は、17日(水)の時点で既に8億5000万ユーロ(およそ1070億円/1ユーロ:125円計算)を超え、現在でも企業、個人問わず寄付が寄せられています。

しかし、その莫大な寄付金については、「不公平だ」「貧困層の支援に使われるべきだ」との声があがり、また再建後のデザインについても論争が巻き起こっていて、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が16日(火)のテレビ演説で国民に呼びかけた「連帯」は早くもほころびを見せています。

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人間よりも石を優先するのか

寄付金の額が、火災後のわずか2日間で、8億5000万ユーロに達したことを受け、20日(土)に23週目を迎えた「黄色いベスト運動(Gilets jaunes)」の参加者からは、「社会の惨状には見向きもしないのに、(ノートルダム大聖堂は)たった一晩で莫大なお金を生み出すことを見せつけた」と、そのあまりにも高額な寄付額に批判の声が上がりました。また、SNS上では「人間よりも石を優先するのか」との批判が相次いでいます。

最も偉大な遺産は「労働者の手と頭」

ミュールーズ(Mulhouse)からパリの黄色いベスト運動に参加した元SNCF(Société Nationale des Chemins de fer Français、フランス国鉄)職員の男性は、「ノートルダム大聖堂への寄付は素晴らしいことだが、(これだけの大金が)たった数時間で集まったのを見せられたら…」と複雑な心境を漏らしました。

また、オセール(Auxerre)から参加した元教師の男性は「私はカトリック信者なので、ノートルダムが大好きだが、最も偉大な遺産は労働者の手と頭だ」と、今守るべきなのはノートルダム大聖堂だけではなく、労働者の生活であることを訴えました。

税額控除も怒りの引き金に

ノートルダム大聖堂再建のための寄付により大幅な税額控除を受けられることが、怒りの要因の一つになっています。

それらの批判を受け、1億ユーロ(およそ125億円)の寄付をした、グッチ(GUCCI)やイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)などを抱えるグループ企業ケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー (François-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者は、税額控除の権利を放棄することを表明しました。

 

再建は元通りか新デザインか

再建に向け、フランス政府は崩落した屋根と尖塔について、建築家によるデザインコンペ(複数の建築家に設計案を提出させ、優れたものを選ぶ)を行う計画を発表しました。マクロン大統領も先のテレビ演説内で「近代建築の要素も含めて検討している」と述べています。

しかしこうした流れに対し、極右政党の「国民連合(Rassemblement National)」の若手議員ジョルダン・バルデラ(Jordan Bardella)氏は、テレビに出演した際「一体何をしようとしているんだ。この狂気の沙汰をやめさせるべきだ。我々はフランス遺産を絶対に尊重していかなければいけない」と述べ、新デザイン公募を痛烈に批判しました。

果たして、ノートルダム大聖堂は今後どうなっていくのでしょうか。

執筆:Daisuke

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