フランス語が流れるように美しく聞こえる理由の一つに「リエゾン」があります。
しかし、リエゾンには「する」「しない」のルールがあり、やみくもに繋げて発音していいわけではありません。レッスンで「そこはリエゾンする」「しない」と言われて混乱したことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、このリエゾンの「する」「しない」のルールを説明します。
リエゾンとは何か確認しよう
先ず、リエゾンとは何かを確認しましょう。
フランス語には、流れるような響きにするための「アンシェヌマン」「リエゾン」「エリズィオン」という3つの現象があります。
アンシェヌマン(enchaînement)※実際の発音はオンシェヌモンに近い
元々発音する語末の子音と、次に来る単語の語頭の母音を繋げて発音することをアンシェヌマンと言います。「つながり」という意味があります。後ろに来る単語の語頭が、発音しない「無音のh」の場合も同じようにアンシェヌマンが起こります。
Il est イル エ⇒イレ
Elle habite エル アビトゥ⇒エラビトゥ
リエゾン(liaison)
発音の上で、母音または鼻母音で終わる単語の後ろに、母音で始まる単語がくる場合、母音の連続を避けるため、語尾の子音を後ろの単語の語頭の母音とともに発音することがあります。これを「連結」という意味のリエゾンと言います。こちらも、後ろの単語が「無音のh」で始まる場合はリエゾンを起こします。
mes amis メ アミ⇒メザミ
Nous avons ヌ アヴォン⇒ヌザヴォン
Vous habitez ヴ アビテ⇒ヴザビテ
エリズィオン(élision)
母音で終わる単語の後ろに、母音で始まる単語が来るとき、前の単語の最後の母音を脱落させて「’(アポストロフ)」でつないで一つの音節にすることがあります。これを「母音の省略」という意味のエリズィオンと呼びます。アンシェヌマンやリエゾンと同様に、後ろが「無音のh」で始まる場合にもエリズィオンを起こします。
Je aime ⇒ J‘aime ジュ エム⇒ジェム
Ce est ⇒ C‘est ス エ⇒セ
Je habite ⇒ J‘habite ジュ アビトゥ⇒ジャビトゥ
必ずリエゾンをする場合を確認する
リエゾンは「必ずする」時と「してはならない」時に分かれます。リエゾンは意味上の同じグループの中で起こり、単語間に明確な意味上の境目がある時は起こりません。また、単語どうしの関連が緩やかな場合は話し手の判断に委ねられます。講演、朗読では比較的リエゾンが多くなります。
歌唱では、本来リエゾンしてはいけないところもリエゾンをする傾向があるため、シャンソンやフランス歌曲を歌っている人は違いに気を付けましょう。
それでは、どんな時に必ずリエゾンをするのか確認しましょう。
主語の代名詞+(目的補語人称代名詞)+( y / en )+動詞
Vous habitez / Je vous écoute / Nous vous en parlons. / Viennent-elles ?
主語代名詞と動詞、その間に目的補語人称代名詞や y / en 中世代名詞が入る場合はリエゾンを起こします。また、倒置形の場合もリエゾンを起こします。
3人称の être の活用の後(単数・複数ともに)
Ils sont allés. / C’est à moi. / Elle est absente.
être の活用の後ろでは基本的にリエゾンが起こりますが、1人称や2人称の活用(単数・複数ともに)の後では、リエゾンをしないこともあります。必ずリエゾンを起こすのは3人称と覚えましょう。
動詞+(目的補語人称代名詞)+ y / en(肯定命令形)
Vas-y. / Allez-vous-en.
肯定の命令形ではこのようにリエゾンが起こります。そのままマルっと覚えてしまいましょう。
限定詞+(形容詞)+名詞
nos anciens élèves / quelques autres amis / trois hommes
限定詞は、数詞、定・不定冠詞、指示形容詞、所有形容詞、疑問形容詞、不定形容詞のことで、「その」「いくつの」「わたしの」「いくつかの」など、名詞を限定する時に使われるものです。
副詞+形容詞
bien / pas / plus / tout / très の後に母音から始まる形容詞が来る場合、リエゾンを起こします。ただし、他の副詞は基本的にはリエゾンしないので、注意しましょう。
前置詞の後
chez eux / dans un quart d’heure / devant elle / depuis un moment / sous enveloppe
ただし、前置詞の中には一般的にリエゾンをしないものもあります。前置詞一覧を見てリエゾンするかどうか確認しておきましょう。
dont / quand / quant の後
dont on parle / quand elle est arrivée / quant à
dont / quand の後ろに母音から始まる単語が来た場合は迷わずリエゾンしましょう。また、 quant à はこれで「○○に関しては」という前置詞句ですので、そのまま「カンタ」と覚えてしまいましょう。
最後に
今回は「必ずリエゾンをする」場合についてご紹介しました。
完全に覚えるまでは、イライラしてしまうかもしれません。特に「関連が緩やかな場合」などは結局どっちなの?!と思ってしまいますよね。まずは「必ずリエゾンする場合」をしっかりと身に付けることを目標に頑張りましょう。
次回は「リエゾンしてはいけない場合」についてお話します。
執筆 Daisuke