Bon voyage !
フランス語で「良い旅を!」というこの言葉、とても有名ですよね。近頃はテレビ等でもよく耳にします。しかしこの「voyage」という単語、つづり通りに発音すると「ヴォヤージュ」ですが…
今回は、「Y」のもつ性質と発音ルールを解説していきたいと思います。
Y はギリシャ生まれ?
まず、Yについて学習しましょう。
「Y」というアルファベットは、フランス語では「イグレック」と読みます。igrec と書き、「ギリシャの(grec)イ(i)」という意味を持ちます。ギリシャ文字の「Υ・υ」(イプシロン、フランス語ではユプスィロン)が由来です。「Y」は「イ」と発音され、発音記号は「i」です。
ちなみに、ギリシャ文字「イプシロン」は「ただのウ」という意味で、ギリシャでは「ウ」または「ユ」と発音されます。
Y アルファベットの名前=イグレック 発音=イ
これがフランス語のYです。
Yから始まる単語はほとんど外来語か固有名詞
実は、フランス語には、Yから始まる単語はほとんどありません。多くの辞書にも単語数は50弱しか載っておらず、そのほとんどが外来語か固有名詞です。
yacht (ヨット:オランダ語、発音はイォットゥ)、yankee (ヤンキー:英語)、yo-yo(ヨーヨー:商品名)、Yvelines(イヴリヌ:地名)など
単語の中に出てくるYの発音を確認しよう
では、Yが単語の中に出てくるとき、どのように発音すればいいか確認しましょう。
Yは単独では「イ」と発音しますが、単語の中に出てくるときはつづりを「i i」に置き換えて発音します。実際にYをi i に置き換えてみましょう。
appuyer (押す)⇒ appui + ier アピュイ イエ
pagayer(パドルを操る)⇒ pagai + ier パゲ イエ
layon(森の小道)⇒ lai + ion レ イォン
rayonnement(放射線)⇒ rai + ionnement レ イォヌモン
このように i i に置き換えてから発音を当てはめてみると、目に見えているつづりと発音が違ってくることがわかります。特に layon は、見た目は「ラヨン」ですが、発音が大きく異なりますね。
前後を子音に挟まれている・語尾にあるYはi iに置き換えない
ただし、i i に置き換えられるのは、Yが母音に挟まれている、もしくはYの前後どちらかに母音がある場合のみです。前後が子音に挟まれている場合や語尾にある場合は、単独の「i」と思って発音しましょう。
stylo(鉛筆)⇒ stilo スティロ
système(制度)⇒ sistème スィステム
thym(タイム)⇒ thim タン
sherry(シェリー酒)⇒sherri シェリ
Bon voyageはどうなる?
では、冒頭のBon voyage はどうなるでしょうか。Yを i i に置き換えてみましょう。
Bon voyage ⇒ Bon voi + iage
このように書き換えられます。発音は、ボン・ヴォイ・イァージュに見えますが、フランス語は「oi」と続くと 「ワ」もしくは「オァ」と発音する規則があるため、ボン・ヴォア・イァージュという発音になります。
他の単語でも確認してみよう
voyageと同じようなつづりの他の単語でも置き換えて確認してみましょう。
moyen/ne (中間の)⇒ moi + ien/ne モワ イヤン/イエンヌ
nettoyer(掃除をする)⇒ nettoi + ier ネットワ イエ
loyer(家賃)⇒ loi + ier ロワ イエ
最後に
独特な発音ルールを持つフランス語。
しっかりとルールを理解しておけば、その都度発音を確認しなくても、難解な単語もきれいに発音することができます。パズルをしていると考えると、訳の分からなかったフランス語の発音も、楽しく習得することができるはず。
アルファベットの持つ特徴を知ることで、発音がもっと身近な存在になるかもしれませんね。
執筆 Daisuke