フランス語を学習していると、どうしてもうまく発音ができなくて、行き詰ってしまうことがあります。レッスンで教えられた口の動きと、実際にフランス人が話している時の口の動きが全然違って、混乱してしまう。
今回はそんな発音練習の時に抱く疑問を、一緒に解決していきましょう。
フランス人の口の動きを観察しよう
よく、テレビ等で「ジュブジュブ~」「ジョワジョワジョワ~ン」と口をすぼめてフランス語を真似している人を見ることがあります。確かにフランス語に聞こえますし、フランス人が話すときにはあまり口は大きく動かさないので、特徴をよくとらえているなと感じます。
では、実際にフランス人が会話をしているところを見てみましょう。
こちらは、France365を運営しているオンラインフランス語学校 Ensemble en Français の Matthieu先生とYohann先生のインタビュー動画です。
お二人ともフランス語の先生なので、とてもわかりやすくはっきりとした発音、口の動きで話されていますが、それでもあまり口は動いていませんよね。
では、今度はこちらの動画を口の動きに注目してご覧ください。
さきほどのMatthieu先生の発音レッスン風景です。
会話している時に比べると、口が大きく開いているのがわかります。特に後半の froid の発音では、しっかりと大きく口を開いて「フロアー」と言っていますよね。
では、一体なぜ実際の会話では使わないような口の動きを、発音レッスンでは教えられるのでしょうか。
フランス語と日本語の筋肉の使い方の違いを知ろう
日本語を母語とする私たちは、小さいころから繰り返し日本語を話しているため、日本語を話すのに適した筋肉が発達しています。同じ日本人でも、海外で育ちその国の言葉を母語、もしくは第二言語としている人は、少し顔の筋肉の付き方が違います。
口を大きく動かして喋る英語圏やドイツ語圏に数年留学した人が、帰ってきたら顔つきが変わっていた、と感じた経験がある人もいるのではないでしょうか。
同じように、フランス語を母語とする人と日本語を母語とする私たちでも、筋肉の付き方は大きく異なります。
小鼻周辺の筋肉をよく使う
フランス語を話すときは、小鼻を少し持ち上げる、もしくは鼻の穴を少し膨らませるような力がかかります。鼻周辺の筋肉をほとんど使わない日本語とは大きな違いです。
もともと鼻のあまり高くないアジア系住民や、ネイティブに近い発音をする日本人がフランス語を話す時の鼻をよく観察してみましょう。少し小鼻がプクッと膨れているのがわかります。
口角の筋肉が発達している
フランス語と聞くと、あまりその印象はありませんが、フランス人は口角をキュッと横に引いて喋ります。そこに注意して、先ほどの二人の先生のインタビュー動画をもう一度見直してみましょう。
唇周辺の筋肉が発達している
フランス語は日本語に比べると母音の数が多く、それぞれが独特の口の動きをします。「ウ」系の発音だけでも、u / y / ə / ø / œ と、5つも存在します。唇を前に突き出したり、すぼめたり、色々な動きが出来る様に発達しています。
眉毛周辺・おでこの筋肉をよく使う
フランス人はよく、おでこや眉毛の動きで感情を表現します。驚いた時や「なるほど」「へー」という時など、よく眉毛を引き上げます。Matthieu先生の表情を見るとよく分かります。
では、日本語との共通点はないのでしょうか?
・頬の筋肉をあまり動かさない
英語やドイツ語に比べて、比較的フランス語は頬の筋肉を使わない為、あまり頬の筋肉は発達していません。これは日本語と同じですね。
フランス人は小さなころから繰り返しフランス語を話しているので、これらの筋肉がすでに鍛えられています。会話をする時には、この筋肉を自然に使っているため、口を大げさに動かさなくても、正しい発音ができます。
しかし、私たちは日本語に適した筋肉は鍛えられていても、フランス語のそれはまだ持ち合わせていません。ですから、最初からいきなりフランス人が会話している時の口の動きだけをまねても、同じような発音にならないのです。
発音練習は筋トレ、会話は試合
発音を練習する時、先生たちは大袈裟に口を動かし、会話している時とはまるで違う口の動きを教えてくることがあります。
運動に例えると、発音練習はその発音の「筋肉の使い方」や「原理」を正しく学ぶための、いわば「筋トレ」なのです。一つ一つ正しいフォームを身に付け、試合に挑む。会話はその「試合」だと思いましょう。
しっかりと大げさに口を動かして、発音に必要な筋肉の使い方を口に覚えさせましょう。慣れてきたら徐々にその動きを減らし、自然なものにしていきます。きっと、より自然な発音が習得できているはずです。
さあ、発音の筋トレで、ネイティブの様な美しい発音を手に入れましょう。
執筆 Daisuke