今回も又、わたくしの話になりそうで恐縮ですが、京都のやや南方にある京田辺市に3年間住んだことがあります。その町はどこに行っても一休禅師の像や絵が見られます。
何故かというと…
それは酬恩庵、別称「一休寺」がその町にあるからでしょう。実をいいますと、一休寺から徒歩5分のところに住む幸運に恵まれていたので、しばしば散歩がてらにこの場所に参拝したものです。
“l’habit ne fait pas le moine”な話
そういったわけで一休とのご縁ができたせいか、最近フランス語の l’habit ne fait pas le moine という諺にたまたま出逢ったときに、禅師の有名な頓智話が思い浮かんできました。
意味:「人は見かけによらず」、人の中身はうわべで到底判断できない。
一休さんの逸話
皆様、一休さんの立派な刀の話はご存知でしょうか。
話によれば、坊主の身であるものの、豪華な刀を腰に掛けて歩き廻ったりしていたとか。鞘は派手な朱色だったが、抜くと中は鋭い刀どころか、ただの木剣だと、人に見せてがっかりさせていたようです。
そして「近頃の僧侶たちはこの刀のようだ。見栄ばかりで、中身は役に立たない。飾りとしてしか用はない」と痛烈に訴えていたようです。なんと気骨のある人ですね!
坊主 bonze と 僧 moine
さて、フランス語に bonze という言葉があります。数少ない日本語から入った外来語です。 un bonze は「坊主」ということなので、特に仏教関係に使います。
フランス文化では、僧のことを古より moine と言い続けてきましたね。有名な moine は数え切れないほどいますが、例えば dom Perignon (略してドンペリ)は聞き慣れていらっしゃらないですか。あのシャンパンのブランドですね。
ふと思ったことですが、一休さんはフランス語が話せていたなら、きっと l’habit ne fait pas le bonze と訴えていたに違いないでしょう。
執筆 Matthieu
※上記の日本語はMatthieu先生が書いたものに一部修正を加えたものです。
日本語が堪能なMatthieu先生は、レッスンでも日本語可能です。ぜひ一度お試しください。(スタッフ)