フランス語を学習していると、たくさんの時制が出てきますよね。直説法だけでも、現在・複合過去・半過去・大過去・単純未来・前未来…。
ここまでは文法学習で必ず登場するので、ほとんどの人が目にしたことがあると思います。実はこのほかに、会話ではほとんど使うことはないけれど、小説などを読むときに必ず出てくる、単純過去・前過去という時制が存在ます。
今回は、その中でも特にいつ使うのか見当もつかない「前過去」について紹介します。
まずは単純過去を確認しよう
前過去を勉強する前に、単純過去について確認しておきましょう。
単純過去は現在とは関係がない、その時限りの過去
フランス語の過去時制で「~した」と過去の行動を表す時制には、複合過去と単純過去があります。
複合過去は、助動詞(avoir/être)+ 動詞過去分詞の形で表され、「その行動の結果、現在はこうなっている」という、過去と現在の関係がつながっている時に使います。
Elle a écrit une lettre. (彼女は一通の手紙を書いた)→その結果、その手紙が今も存在している(かもしれない)。
一方、単純過去は助動詞を使わずに動詞の単純過去活用のみを使い、「現在の状況とは一切関係ない、ただ単純に過去の行動を述べているだけ」の時に使います。現在の状況や状態とは関係がなく、過去の行動を単純に述べているだけなので、小説などの書き言葉として使用されます。
Elle écrivit une lettre. (彼女は一通の手紙を書いた)→手紙が今もあるかどうかはわからない、問題ではない。
単純過去は客観的事実
単純過去は「客観的」に述べていることが多いので、ほとんどの場合「彼(ら)」「彼女(ら)」と三人称で述べられることが多いのが特徴です。
複合過去は主観的で現在との関わりがあって、単純過去は客観的で現在のそれとは一切関係を持たない・書き言葉、と覚えておきましょう。
前過去はどういう時に使うの?
さて、複合過去と単純過去の違いが分かったところで、次は前過去について確認しましょう。
助動詞(avoir / être)の単純過去+動詞の過去分詞
前過去はフランス語で passé antérieur (前の過去)と言います。
前過去は、複合過去を作るのと同じ要領で、助動詞(avoir / être)の後ろに動詞の過去分詞を置きます。この時、助動詞の avoir / être を単純過去に活用させます。
Il a mangé du pain. ⇒ Il eut mangé du pain.
Elles sont allées au Musée du Loure. ⇒ Elles furent allées au Musée du Louvre.
Il s’est réveillé à 6h du matin. ⇒ Ils se fut réveillé à 6h du matin.
助動詞が être の時(移動の動詞、代名動詞)は、複合過去の時と同じように過去分詞を主語の性と数に一致させます。
前過去の時制は、単純過去の「直前」
前過去は常に単純過去と一緒に用います。そして、前過去の時制は単純過去の「前」、しかも「直前」にあたります。単純過去の直前に終了した行為・行動を表すときに使い、「○○するやいなや」と訳します。Dès que (○○するやいなや)や Aussitôt que (○○するとすぐ)、などと一緒に使われることが多いです。
Ils sortirent dès que j’eus chanté. 私が歌うや否や、彼らは出ていった。
Quand elle se fut réveillée, elle partit. 彼女は起きるなり、出発した。
最後に
滅多に目にする機会がない単純過去や前過去。知らなくても日常生活に支障はそれほどないけれど、書き物を読むときには必ず出てきます。その都度辞書を牽いていると、なかなか先へ進めませんよね。そんなときの為にも、是非、単純過去と前過去も勉強しておきましょう。
執筆 Daisuke