10月16日(火)、RATP(パリ交通公団/Régie Autonome des Transports Parisiens)とイル=ド=フランス・モビリテ(Île-de-France Mobilités/イル=ド=フランス公共交通労働組合、旧STIF)は、地下鉄および駅構内の大規模な清掃強化計画を発表しました。計画には、利用者へのマナー向上を呼び掛ける案内表示、地下鉄利用者が問題を直接報告出来るアプリケーションの提供、そして利用者に特に不評の悪臭の除去などが含まれています。
清潔さは最優先事項
RATPとイル=ド=フランス・モビリテは、パリの公共交通機関の清潔さ促進のための新たな清掃強化計画に、年間数百万ユーロの予算を確保すると発表しました。
悪名高いパリの公共交通機関
パリには、地下鉄(Métro)、トラム(Tramway)、RER(Réseau express régional/都市圏高速鉄道網)の他、郊外電車(Train)、TGV(Train à Grande Vitesse/フランス版新幹線)などの公共交通機関があります。中でも、地下鉄やRERの車内や駅構内は決して清潔とは言えない場所が多く、また酷い悪臭がすることで悪名が高く、パリ市民を始め、パリを訪れる観光客にとって、パリの印象を悪くする大きな要因となっています。
地下鉄の駅にはほとんどトイレはない
また、基本的に地下鉄の駅にはトイレはほとんど設置されておらず、駅構内で用を足す人が後を絶たず、悪臭の原因となるだけでなく衛生的にも多くの問題を抱えています。
知事が「使いたいという気にさせる公共交通機関の提供を」と宣言
改修工事を終えたばかりの地下鉄ジョレス(Jaurès)駅の視察に訪れたヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)イル=ド=フランス地域圏知事は、「清潔さは最優先事項であり、人々を、使いたいという気にさせる公共交通機関を提供しなければならない」と述べました。
年間およそ6億5000万円の予算を計上
RATPとイル=ド=フランス・モビリテは、今回の清掃強化計画のために、新たに共同で、2018年は200万ユーロ(およそ2億6000万円/1ユーロ:129円計算)、2019年から2021年にかけては、年間500万ユーロ(およそ6億5000万円)の予算を計上した、と発表しました。
この予算は、イル=ド=フランス・モビリテの、乗客への快適性向上の為に組まれた年間補正予算8500万ユーロ(およそ110億円)から割り当てられます。
具体的な計画は
清掃不備、不衛生な場所を乗客が報告できる
乗客が、車内や駅構内で清掃の不備や不衛生な場所を見かけた場合、専用のスマートフォンアプリを使って、RATPに報告することができます。
[#Propreté] Autre grande nouveauté ➡ Il est désormais possible de signaler sur l’appli #RATP des problèmes de propreté pour un traitement plus réactif 📱👊 pic.twitter.com/Nruz3Yzr5j
— RATP Group (@RATPgroup) 2018年10月16日
マナー向上を呼び掛ける案内
利用者に対してマナー向上を呼び掛ける案内表示を設置します。具体的には、
・一目でゴミ箱だとわかる様な、わかりやすいデザインにする
・チケット販売機や改札のすぐそばにゴミ箱を設置し、レシートや使用済みチケットを捨てやすくする
・駅の入り口に灰皿を設置し、駅に入る前にタバコを消すように促す
等があります。
[#Propreté] Un affichage ludique est désormais déployé sur les #Ligne9 et #Ligne13 pour adopter les bons gestes au quotidien ! #TousConcernés pic.twitter.com/sN8uEIGE05
— RATP Group (@RATPgroup) 2018年10月16日
悪臭を中和し除去する
RATPは今年の年末までに、シャトレ=レ・アル(Châtelet-les Halles)、オベール(Auber)、ナシオン(Nation)、サン=ドゥニ・ポルト・ド・パリ(Saint-Denis Porte de Paris)など18ヶ所に、悪臭除去システムを設置します。更に、2019年から2021年にかけて、30ヶ所に増設する予定です。
最新自立式清掃マシン導入を検討
RATPは昨年、完全に自立して3万平方メートルまで床掃除することのできる、自動清掃マシンの試験を行いました。試験の結果をもとに、今後導入していく計画です。自動清掃マシンによって、清掃員は他の清掃に集中することができるため、清掃効率がアップすると期待されています。
将来的にはトイレを増設予定
現在、RATPが管理している駅のトイレは、地下鉄が16ヶ所、RERは32ヶ所、の合計48ヶ所しかありません。またこれらのトイレは、一度に一人しか利用することができない上、故障などの原因で利用できないことが多く、決して便利とは言えません。
RATPは今後、トイレの数を100ヶ所まで増設する方針で、現在はどの駅にトイレを設置するか検討しているとのことです。
はたして、パリの地下鉄は清潔だ、と言われる日はやってくるのでしょうか。今後に期待したいですね。
執筆:Daisuke