10月17日(水)、インターネットメディア«Contexte»によると、フランス政府は交通に関する指針法案の一環として、住民10万人以上の自治体に入る車への通行税を、検討していることが明らかになりました。
10万人規模都市の排ガス対策
法案によると、この通行税は正式には「渋滞税」(tarif de congestion)と呼ばれ、市内に入る車の数を制限することで、排ガスや騒音公害を減らすことを目的としています。
導入するか否かの判断は各自治体にゆだねられ、料金は各都市の入口で、それぞれの運営する交通局( l’autorité organisatrice de la mobilité )によって徴収されます。
パリでは イル=ド=フランス交通局 (Île-de-France Mobilités=旧STIF)により徴収されることになります。
パリ、マルセイユ、リヨンでは5ユーロの「渋滞税」
「渋滞税」の金額や適用される時間帯、料金所の設置場所などの詳細は各自治体に一任されます。 法案が可決されると住民10万人の都市で上限2.5ユーロ(約325円)、人口50万人以上の都市であるパリ、マルセイユ、リヨンの3都市では、倍の5ユーロ(約650円)の「渋滞税」が徴収できることになります。
因みに、すでに2003年に導入したロンドンの渋滞税は現在11.5ポンド(約1700円)です。
大型トラックには最高4倍課金、住民はタダ?
法案では、EU域内でVL(véhicule léger)と呼ばれる3.5トン以下の車以外には、車種により、最大で4倍課金することも検討されています。
逆に、課金ゾーンに住居や職場がある人には割引を適用したりまたは無料にすると、明記されています。
ミラノでは空気の質が改善
2008年にテスト導入したミラノでは、初年度で車の数が15%減り、その後本格導入したところ、2011年~2012年の間で31%減の好結果となりました。
EU圏の空気の質を観察しているフランスの Ademe ( L’Agence de l’environnement et de la maîtrise de l’énergie= 環境エネルギー局 ) によると、この傾向はその後も変わることなく、ミラノ市内の課金ゾーンの空気中の二酸化炭素が9%減と、 空気の質は確実に改善しています。
イタリアではその後ローマを含める38の自治体で「渋滞税」を設置しています。
大都市ロンドンでは?
2003年に「コンジェスチョン・チャージ(Congestion charge)」と呼ばれる「渋滞税」をいち早く導入したロンドンの現在の課金ゾーンは、21キロ平米で、ロンドン市の約3%の地域になります。
料金は当初の5ポンドから現在倍以上になっていますが、住民や車の種類により、様々な例外や割引があります。
ロンドンでは最初の5年間、車の数が16%減少したものの、その後徐々に頭打ちとなっています。また、景気好調などでロンドン市内の交通量は増える傾向にあるなど、「渋滞税」が空気の質の改善に貢献したかどうか、明確に計るのは難しいとAdemeはコメントしています。
執筆:マダム・カトウ