カンヌにあるベルモンドのハンドプリント
9月7日(火)、フランスの国民的人気俳優ジャン=ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)氏が昨日6日、88歳で亡くなりました。1960年ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)監督の「勝手にしやがれ」で一躍スターになり、その後も数多くの映画で活躍したフランスを代表する大俳優の死を悼む報道でフランスのメディアは持ちきりです。
「勝手にしやがれ」で一躍スター
1933年4月9日パリ郊外ヌイイ=シュル=セーヌ(Neuilly-sur-Seine)生まれ、イタリア系フランス人で彫刻家の父と画家の母を持つベルモンド氏は、子供の頃ボクシングに興味を持ち当初ボクサーを目指しました。後年当時を振り返ったベルモンド氏は、ボクサーになるには「ハングリーさや憎しみが足りなかった」とコメントしています。
ボクシングを断念した後、芝居に興味を持ち、フランス国立演劇学校の受験失敗を2回経て3度目にようやく入学しています。その後舞台で修行を積みながら才能を認められ、映画界に入っていきます。
1960年ジャン=リュック・ゴダール監督の映画でヌーベルヴァーグの代表作「勝手にしやがれ」(À bout de souffle)で一躍スターとなり、世界的に有名になったベルモンド氏は、代表作に「気狂いピエロ」(1965年)(Pierrot le Fou)、自らスタントもこなした「リオの男」(That man from Rio)、同時代の人気俳優アラン・ドロンと共演し大ヒットした「ボルサリーノ」(Borsalino)など多数あります。ベルモンド氏は50年以上のキャリアの間に80本以上の映画に出演しています。
アラン・ドロンも「同僚」の訃報に涙
フランスでは名前をもじって「ベベル」(Bébel)や主演した映画のタイトルにちなんで「おかしなおかしな大冒険」(「ル・マニフィック」(=素晴らしい人)の愛称で親しまれ、アクションからコメディーまでこなす多彩な俳優だったベルモンド氏は国民的人気を博しています。
映画界の「レジェンド」と呼ばれる大俳優の死を悔やむメッセージが世界中のメディアを賑わせています。
ベルモンド氏と同世代で同じくフランスを代表する俳優アラン・ドロン(Alain Delon)氏は、訃報に際し目に涙をうかべて「親しい友人を失ったようなショックだ。60年来知っている仕事仲間だった」とテレビのインタビューで悲しみを表明しています。
9日(木)アンヴァリッドで「国葬級」の追悼式
バシュロー(Roselyn Bachelot)文化相は、昨日テレビのインタビューで「全てのフランス人を一つにすることができる俳優だった」と敬意を表し、「国葬級のオマージュ(追悼)が行われる」ことをほのめかしていましたが、本日、9月9日の木曜日にアンヴァリッド廃兵院(l’Hôtel national des Invalides)で国の追悼式を行うと発表されました。
マクロン大統領、「ベルモンド氏は国の宝」
マクロン大統領はツイッターで、「彼は永遠にル・マニフィックであり続けるだろう。ジャン=ボール・ベルモンド氏は国の宝だった。エレガントだけど豪快な笑い、高い声で機敏な身のこなし、崇高な英雄でありながら親しみがあり、疲れを知らない無鉄砲、言葉のマジシャン。人々は、彼の中に何かしらの自分自身を見いだすことができる」と、追悼の意を表明しています。
Il restera à jamais Le Magnifique. Jean-Paul Belmondo était un trésor national, tout en panache et en éclats de rire, le verbe haut et le corps leste, héros sublime et figure familière, infatigable casse-cou et magicien des mots. En lui, nous nous retrouvions tous. pic.twitter.com/4CVI9uwKLA
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) September 6, 2021
カンヌ映画祭で名誉賞、国からレジオン・ドヌール勲章授与
ベルモンド氏は2001年に脳梗塞で倒れた後は、後遺症のため第一線から退いています。
映画への誘いには事欠きませんでしたが、ドキュメンタリーに出演した以外はほとんど活動していませんでした。
2011年のカンヌ国際映画祭では、今までの映画界での功績を讃えるため、名誉賞のパルム・ドール・ドヌール(Palme d’or d’honneur)賞を受賞し、また2019年にはフランスの最高位勲章であるレジオン・ドヌール勲章(ordre national de la Légion d’honneur)を授与されています。
映画界の「レジェンド」と呼ばれるジャン=ポール・ベルモンド氏は9月6日、パリの自宅で安らかな眠りにつきました。
執筆:マダム・カトウ