8月21日(水)、フランスで初となる「猫の腎臓移植」第一号のタラ(Tara)ちゃんを、フランスの有力紙パリジャン(Le Parisien)が取材しました。
余命48時間の宣告
タラちゃんは3歳、ブルーグレーの毛並みが美しいシャルトル種のメス猫で、リヨン(Lyon)近郊に住むケネディ家の一員です。彼女はドアの隙間にある柱で爪とぎをするのが好きで、ドアの取っ手に全体重をかけてぶら下がるとドアが開くことを知っているそう。
そんな元気一杯で賢いタラちゃんですが、3ヶ月前両方の腎臓が不全に陥り、余命48時間の宣告を受けました。腎臓病はネコ科のペットに多い病気で、猫の死亡原因の中でもっとも多い疾患です。
愛猫の余命宣告を受けたケネディ家のご主人、アメリカ人のスコットさんは英語訛りのフランス語で「もう出来ることは何もないんですか?」と獣医を問いつめました。タラちゃんを兄弟のように可愛がっているグレースちゃん、バーナード君、ロバート君の3人の子供達に、どうやって「タラは死んでしまう」と伝えればいいかわからないからです。
すると獣医は、「唯一の望みは腎臓移植だ」と答えました。
そして今年の5月31日、タラちゃんはフランスで初めて腎臓移植を受けた猫となりました。
スコットさんのパートナーでフライトアテンダントのオドレー(Audrey)さんは、「偶然にも、フランスで動物の腎臓移植をしているたった二人の医者が、私達の住む町からそう遠くないリヨン市内の病院にいることがわかりました」と、短期間で手術が可能だった経緯を語っています。
ドナーは同じ飼い主のどら猫スシ君
移植手術には猫の腎臓のドナーが必要ですが、タラのドナーはケネディ家で飼っているもう一匹の猫、どら猫のスシ(Sushi)君でした。スシ君は、厳しい検査の結果タラちゃんとの適合性が完璧で、しかも大変健康なことから、2つの腎臓のうち1つを移植する手術が可能になりました。
大の猫好きだというオドレーさんは、「スシは昨年の11月に引き取ったばかりでした。まさか、彼がタラを救うことになるなんて夢にも思いませんでしたが」と、今回の移植は幸運な偶然の重なりだったと説明しています。
その救世主、トラ縞で緑の目が愛らしいスシ君ですが、自分の話を聞きにきた知らない人(取材班)を見て逃げ出してしまいました。
腎臓移植費用、6000ユーロ
人間同様、猫も腎臓は一つあれば生きていくことができます。移植手術は人間の手術と同じテクニックで行われます。
スシ君の左の腎臓摘出手術は全身麻酔の状態で約1時間かけて行われ、摘出後すぐに隣の手術室に運ばれた彼の腎臓は、2時間半の手術を経て無事タラちゃんに移植されました。
※画像はイメージです。
執筆:マダム・カトウ