8月19日(月)、ノートルダム寺院の修復工事は、現場の埃に含まれる鉛の濃度が高いことから中断されていましたが、十分な安全確保を行い、本日再開されることになりました。
現場で非常に高い濃度の鉛検出により7月25日から工事中断
ノートルダム寺院の修復工事は、現場の埃に含まれる鉛の濃度が高く作業員の健康を害する恐れがあることから、7月25日より労働局の指示で中断されていました。
対策として、現場には作業員用のシャワー、使い捨て作業服、現場への出入りをコントロールするためのバッジの導入などが新たに追加されました。
修復工事前段階である補強工事をまずは再開
本日より再開する工事では、まず外壁を支える飛梁(arcs-boutants)の下に新たなアーチを設置そ、その上下に天井を作ります。これは飛梁を安定させ、瓦礫を取り除くためです。
また、火力で溶解した尖塔の周りに作られていた足場(火災前の修復工事のために作られていたもの)を解体します。
この補強工事は複雑で、しかもゴシック建築の土台が傾いたり石が落下しないよう慎重を要するため、大変時間がかかるものになります。
そのため、修復工事自体の開始は早くても2020年のはじめごろになるといわれています。
火災では尖塔、天井、骨組みとなる木組み、そしてヴォールトと呼ばれる尖塔アーチで支えられた円形状の天井が15%焼失しています。
よって、修復工事を開始する前に、まずどんな素材を使ってどんな工事をするのか、焼失した尖塔を再現するのかしないのか、再建案の公募をするのか、さらには工事請負業者の選定などをこれから決めていかなくてはなりません。
加えて、寺院前の広場に信者や観光客のための仮設礼拝堂を作るのかなども、これから検討されます。
ノートルダム寺院崩壊のリスク
フランス文化大臣(Ministre de la Culture)フランク・リエステル(Franck Riester)は、「ノートルダム寺院は崩壊のリスクにさらされており、工事の再開は緊急を要する」と発表しています。
大臣によると、ノートルダム寺院は火災の2日後、県警察により《危険建造物》に指定されており、7月の猛暑の影響でヴォールト部分の石が落下するなどの不安定な状況が続いています。
周辺の鉛汚染を防ぐため、8月23日まで除染のため通行規制
4月15日の火災で寺院の建造に使われている何百トンもの鉛部分が溶け、その一部が蒸発して大気や地面に放出されたことから、ノートルダム寺院周辺の空気中でには非常に高い濃度の鉛が検出されています。
近隣住民、特に子供が長期にわたり鉛にさらされると健康を害する可能性が高いため、8月13日より寺院と周辺地の除染が行われています。
除染は段階的に行われるため、ノートルダム寺院周辺では8月23日まで通行規制が行われます。
執筆:マダム・カトウ