2024年2月16日(金)、本日から18日(日)にかけSNCFフランス国鉄は車掌のストライキでTGVが2本に1本に間引きされ、冬休みの行楽客や帰省客が各地で足止めを食らっています。昨年過去最高益を出した同社に大幅な昇給を要求する組合ですが、会社側は過去数年で十分に昇給したと主張、メディアで注目されています。
車掌の給与「500ユーロ上がった」と会社側、組合は否定
2022年12月の労使交渉の約束を果たし、過去二年間で500ユーロ(約80,000円/1ユーロ=160円)も昇給した、と主張するフランス国鉄社長クリストフ・ファニシェ氏(Christophe Fanichet)は今回のストについて「理解不能だ」とコメントしています。
これに対し、組合の一つ、シュード-ライユ(SUD-Rail)代表のファビアン・ヴィルデュー氏(Fabien Villedieu)は、会社側は我々を「甘やかされた子供」に見せかけ世論の反感を買わせようとしている、と強く反発しています。
同紙によると、車掌たちはそれぞれ自分の給与明細を確認したものの、会社の主張するような昇給があった人は「一人もおらず」、確かに過去3年間で17%の昇給がありましたが、それ以前の8年間一度も昇給がなかったため、実際は11年間で17%昇給したことになります。
しかも2021年から23年までの3年間のインフレ率は、13%(12.1%インセ発表による)だったことから、その差はわずか4%にすぎません。
組合側は、今回のストで11%以上の昇給を要求しています。
車掌の初任給は月3,000ユーロはウソ?
組合によると、会社が発表しているTGVの車掌の初任給は3,000ユーロ(約480,000円)はウソだと主張しています。
フランス国鉄で車掌職に就く場合、まずTERと呼ばれる地域圏急行の車掌から始めます。TERの車掌の最低賃金は2,000ユーロ(約320,000円)です。
フランスの新幹線にあたるTGVの車掌になれるのは、キャリアの中盤になってからです。SNCFの採用情報をみても、車掌の初任給は年俸24,000ユーロ(約3,840,000円)から32,000ユーロ(約5,120,000円)、月額にして2,000ユーロ(約320,000円)から2,670ユーロ(約427,000円)になります。
これに加え、列車の無料乗車、優遇された健康保険、住宅補助(フランス民間企業にはない)、業績により支給される決算賞与など、様々な特典があることをSNCFは強調しています。会社側は現在の給与の平均値の公表はしていません。
様々なボーナスが支給されており、昨年12月と今年3月の2回に分けて、合計800ユーロ(約128,000円)が支給されます。また、家賃が高騰する地域にすむ社員に対し、月々50ユーロ、年間600ユーロ(約9,6000円)の住宅補助が支給されています。
フランス国鉄、2023年の純利益24憶ユーロで過去最高
2023年にSNCFを利用した乗客は122万人で、過去最高だった2022年から4%増と記録を更新、さらに24憶2500万ユーロ(約3924憶円)の純利益をたたきだしています。
同社は決算結果による社員への配当として、5月に一人あたり1,200ユーロ(約192,000円)のボーナスを支給する予定です。
組合側、社員にも「パイの分け前」を
しかしながら、こういった特別ボーナスは年金の掛け金のベースとして加算されないことから、組合側は月々の手当の500ユーロ増額を要求しています。
そうはいっても、組合側は会社側との真向からの衝突をさけるため(つまり長期のストを避けるため)、月150ユーロ(約24,000円)ぐらいからの提案も聞き入れる準備があるとして、会社側の出方をうかがっています。
執筆:マダム・カトウ