フランス「出生地主義」に例外はありか?マヨット島移民問題で憲法改正議論へ

2024.02.13

2024年2月13日(火)、フランス海外県の一つマヨット島(Mayotte)に不法移民が近隣の島から押し寄せ治安が悪化、耐えかねた住民によるデモが続いています。先日同島を訪問したダルマナン内務相(Gérald Darmanin)は、外国籍の両親から生まれた子供でも出生地がフランス国内であればフランス国籍を取得することができる「出生地主義」(Droit du sol)が大量の移民を惹きつける魅力になっていると発言、マヨット島のみ不採用にすることを検討していると明らかにしました。さらには出生地主義の憲法改正について議会で議論されます。

 

アフリカに最も近いフランス、人口の半分近くが不法移民

インド洋に浮かぶマヨット島は、人口わずか31万人、フランス101県のうち最も貧しい県です。

もともとフランス領コモロ諸島(L’archipel des Comores)に属していたこの小さな島は、独立を選んだ他の島々と異なり、フランスへの帰属を支持、2009年の住民投票を経て2011年に正式にフランスの海外県になっています。

子供にフランス国籍を、マヨット島で出産

アフリカに最も近いフランスでありEU加盟国の一部となったこの島には、近隣のコモロ諸島やアフリカからの移民が後を絶ちません。人口の48%を移民が占め、その多くは不法滞在者と推定されています。

この島での出生率は数年前から急上昇、子供にフランス国籍を取得させようと、ボートで簡単に渡れる近隣のコモロ諸島から流入する妊婦が多数いると問題視されています。

 

出生地主義とは?

両親が2人とも外国籍の場合、フランスで生まれた子供は国内に11歳から18歳までの間少なくとも5年間滞在していることを条件にフランス国籍を申請し取得することができます。

この出生地主義は憲法で定められていることから、本来一部の地域だけ例外にすることができません。

しかしながら、マヨット島では不法移民問題が顕著になり始めた数年前から、すでに国籍取得への条件はフランス本土より強化されており、2018年には外国籍の両親は子供の出生時に少なくとも3か月間連続でフランスに滞在していることが条件に追加されました。

生まれた子供の半分は両親とも外国籍

内務省によると、マヨット島で子供が生まれた場合のみに課されるこの条件の追加だけで、2018年にフランス国籍を取得した子供は2,800人とそれまでの3分の1に、2022年には799人にまで減っています。

しかしながら、2022年にマヨットで生まれた子供10,730人のうちの実に44%が両親とも外国籍の子供でした。そのため、この子供たちが18歳で成人になるころに大量の国籍申請が行われることが懸念されます。

ダルマナン内相の発表が実現すると、両親が外国籍の場合マヨット島で生まれた子供だけがフランス国籍を取得する権利を剥奪されることになります。

 

容易でない憲法改正、国会で議論へ

「マヨットの状況を打破するには憲法改正しかない」という内相の発言どおりにフランス101県のうちの1県だけを例外にするということは、「フランス全土は一つである」というフランス憲法を覆すものになります。そして憲法改正は容易ではありません。

憲法改正には国民投票か議会投票で5分の3を獲得する必要がありますが、現政府は国会での絶対多数をもっておらず、上院セナ(Sénat)は右派が絶対多数を占めているため議論は難航することが予想されます。

極右、「出生地主義」放棄を訴え

内相の「憲法改正」発言をうけ、左派は「フランスの国の基盤となる歴史と大原則を根本から覆す危険な見直し」と猛反対、一方極右、右派保守は歓迎しています。

極右は憲法改正により、マヨット島のみならずフランス全土における「出生地主義の全面的な放棄」を唱えています。

執筆:マダム・カトウ

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