2024年2月9日(金)、世界でも有数の現代美術館の一つ、パリのポンピドゥーセンター(Centre Pompidou)が、2025年夏より改装のため閉館します。来年3月より館内の図書館、多目的ホール、常設美術館は一般公開を終了します。今年の10月より引っ越しが開始されますが、館内へのアクセスは来年の閉館まで可能、パリ五輪期間中もすべての作品が一般公開されています。美術品など14万点の行先が気になるところです。
リニューアルした「ボブール2.0」が2030年再オープン
パリ市民には「ボブール」(”Beaubourg”)の愛称で親しまれるポンピドゥーセンターの改装工事は、2026年より2億60万ユーロ(約323憶円/1ユーロ=約160円)を投じて行われます。
社長のローラン・ル・ボン(Laurent Le Bon)氏は記者会見で、2030年にリニューアルオープンするボブールは、「これまでのスピリットを残しつつ」も新しい展示方法と「若者と新興のクリエーションに特化したフォーラム」で、バージョンアップしたものになると発表しています。
改装工事とは別に、1億8000万ユーロ(約289憶7000万円)をかけたバーチャルミュージアムのプロジェクトも予定されています。これについては、企業などからの寄付、所蔵品の貸し出し、および他国とのパートナーシップなどで財源を確保すると同氏は説明しています。
常設展示作品3,000点、所蔵品14万点
ポンピドゥーセンターで我々一般客の目にふれるのは常時3000点程度ですが、同館は膨大な作品を所蔵しています。その一部は、2021年から工事中のグラン・パレ(Grand Palais)に保管されます。
1900年、パリ万国博覧会のために作られ、今年の4月に再オープンするグラン・パレは、今年のパリ五輪でテコンドーとフェンシングの競技会場になる予定です。
グラン・パレ内の2000平米と800平米の2つの多目的ホールでは、年に4回ポンピドゥーセンター所蔵品の特別展が予定されています。
グラン・パレにて特別展開催、まずはニキ・ドゥ=サン=ファル
こけら落としとして、ポンピドゥーセンターの中庭の噴水にあるカラフルな作品で親しまれるニキ・ドゥ=サン=ファル(Niki de Saint Phalle)展、ジャン・タンゲル(Jean Tinguel) 展、そしてセンターの初代館長を務めたスウェーデン人キュレーター、ポントゥス・フルテン(Pontus Hultén)コレクションが初年度に開催されます。
続いてブリュノ・デシャルム(Bruno Decharme)の242人のアーテイストによる900点のコレクション展が予定されています。これらの作品は2022年にセンターに寄贈されたものです。
そして2026年にはアンリ・マティス(Henri Matisse)展が、ガラス張りのグラン・パレに彩を加えることになります。
従業員の多くはグラン・パレに、ストは解除
ポンピドゥーセンターで働く約1000人の従業員のうち、400人が引っ越しの開始とともににグラン・パに雇用されます。
長期閉館に伴い雇用に不安を感じた従業員の一部は、昨年末より3か月間にわたりストライキを実施、センターは24日間の閉館を強いられました。ようやく組合側との折り合いがつき、10日前にストは解除されています。
他の従業員はパリ近郊エッソンヌ県(Essonne)のマッシー(Massy)に 2026年にオープン予定のポンピドゥーセンターでの雇用が決まっています。こちらのポンピドゥーセンターは作品の修復と保管、および制作を目的として作られます。
ルーブル、オルセーなど、パリ市内のミュージアムに6,000点
オルセー美術館(Orsay)、オランジェリー美術館(Orangerie)ジュ=ドゥ=ポーム美術館(jeu de Paume)、ギメ美術館(Guimet)、ケ・ブランリー博物館(Quai Branly)、メスのポンピドゥーセンター (Centre Pompidou à Metz)など、パリ市内の複数のミュージアムに6,000点~8,000点の作品が分散展示されます。
2026年秋からは、ルーブル美術館にも一部の作品が保管、展示されます。
上海、マラガのポンピドゥーセンターなど、コレクションは世界へ
フランスの現代美術館の「ブランド」として、ポンピドゥーセンターの名前とコンセプトは海外に「輸出」され、すでにスペインのマラガ(Malaga) や上海には同センターの名前のついたミュージアムがあります。今後ソウル、さらに2027年にはニューヨーク近郊のジャージーシティにもオープンします。
サウジアラビアやブラジルとは、ミュージアム開設のノウハウなども含めた契約が結ばれています。
執筆;マダム・カトウ