9月16日(金)、ウクライナ侵攻によるロシアからのガス供給停止で、この冬はフランスおよびヨーロッパ各国で深刻な電力危機が懸念されています。フランス各地で対策を迫られる中、パリ市のイダルゴ(Anne Hidalgo)市長は10%の節電を行うと発表しました。パリ名物のエッフェル塔(Tour Effel)や凱旋門(Arc de Triomphe)などのモニュメントも例に漏れず、今月23日より消灯時間が繰り上げられます。
何もしなければ、パリ市の電気代3,000万ユーロ上乗せに
パリ市の公共サービスに使用される電力は、市全体の使用量の約2%を占めていますが、これに民間業者に委託しているサービスを加えると3〜4%になります。
2021年の電力使用量は2004年に比べ11%減っていますが、節電をしなければ今年は電気代の値上がり(約50%)により、およそ3,000万ユーロ(約42億8000万円/1ユーロ=約142.85円)の費用が追加で発生することになります。
公共施設の室温を19℃から18℃に
今年の冬、公共施設やパリ市所有の建物の室温は現在の19℃から1℃低い18℃、夜間は12℃に設定され、朝の暖房開始時間は30分遅くなります。
この新しい規則はパリ市所有の施設であっても、老人ホームや保育園などには適用されません。フランスの公営プールは全て温水による屋内プールですが、パリ市営プールの水温および室温はそれぞれ1℃下げて26℃、25℃に設定されます。
さらに今年のセントラルヒーティングの稼働開始日は気温によりますが、早くても10月後半と例年より遅くなります。パリの街灯については、「パリ市民の安全を優先して」消灯時間の繰り上げなどの対象にはなっていません。
「光の街」のライトアップ9月23日より22時まで、エッフェル塔も消灯繰り上げ
パリ市庁舎、ノートルダム寺院、凱旋門などのモニュメントのイルミネーションが有名なため「光の街」(La Ville Lumière)を自称するパリですが、これまで午前1時までだった歴史的建造物のライトアップが今月23日より22時消灯に短縮されます。
エッフェル塔も例に漏れず、ビジット終了時間の23時45分に合わせて消灯となります。
イダルゴ市長は「光の街は輝き続ける」(”La Ville Lumière restera la Ville Lumière…)としつつも、「節電は例外なく行われなければならない」と発言しています。
民間にも節電要請、デパート、スーパー、ホテルチェーンも対象
10月中旬にパリ市は大手スーパーやホテルチェーン、デパートや商業施設、ビルのオーナー等との会合を開き、民間企業にも10%の節電を要請することになっています。
また区役所は、商店などに対し、夜間の店内照明や入口のドアの解放禁止、飲食店のテラスの暖房禁止などを周知させ、規則厳守を徹底させます。
夜間消灯、法律遵守徹底へ
実は2013年1月に施行された法律により、人のいないオフィスの照明は営業終了から1時間以内に消灯、商店などのショーウィンドウの照明は午前1時〜朝7時の間は禁止されています。
しかしながら、盗難防止や照明システムの都合、周知不足などでこれまで徹底されておらず、一晩中ついている店内照明やオフィスを見かけることも珍しくありませんでした。
仏地方都市、市営プール閉鎖、街灯消灯時間繰り上げも
パリ市に先駆け、地方都市ではすでに徹底した省エネ対策を開始したところがあります。
温水と屋内の暖房に膨大な費用がかかるプールですが、ベルサイユ(Versailles)やリモージュ(Limoges)、グランヴィル(Granville)ほか国内約30箇所にある市営プールは、委託経営している民間業者がコスト増に耐えられないという理由ですでに閉鎖されています。
リール(Lille)、トゥーロン(Toulon)ではプールの水温を2℃下げ、10月の連休の間は閉鎖されます。リール市はすでに2箇所の例外を除き、公共建造物のライトアップを今月1日より停止しています。
これにより同市は年間17万キロワットの節電を見込んでいます。またごく一部の小規模な地方自治体では、夜間の街灯の消灯時間を繰り上げるところも出ています。
執筆:マダム・カトウ