現役アーティストがパリでおすすめの美術館をご案内するシリーズ4回目は、「ロダン美術館」と「マルモッタン・モネ美術館」です。彫刻家ロダンと画家モネの作品を堪能できるこの二つの美術館。今回はその魅力についてご紹介します。
7)ロダン美術館
彫刻「考える人」といえば誰もが知っているかと思います。その制作者であるオーギュスト・ロダンの作品をたくさん鑑賞できるのがロダン美術館。パリ中心部にありながらゆったりとした時間が流れる美術館です。
最寄り駅Varenneから歩いてすぐですが、裏通り沿いの入り口はひっそりとしてあまり目立ちません、うっかり見落とすこともあるかもしれませんので、注意してください。
見応え十分なロダンの作品群
この美術館には「考える人」のもとにもなった「地獄の門(日本の国立西洋美術館にもあります)」や、発表当時「生身の人体から鋳型した」と咎められた「青銅時代」など、ロダンの代表作が展示されています。
またロダンの恋人でありライバルでもあったカミーユ・クローデル(Camille Claudel)の作品や、彼が独自に収集した作品群も収蔵しています。
館内の庭園にも作品がふんだんに設置されており、美しい風景の中でみるロダンの芸術は格別です。
日本人女性がモデルの作品も
われわれ日本人にとって興味深い所蔵作品が「死の顔・花子」です。花子はロダンと同時代に欧州各地で活躍した日本人の女優。マルセイユ植民地博覧会で彼女の舞台に感銘を受けたロダンが、モデルになってくれるように懇願したといわれています。
「死の顔」と言ってもデスマスクではなく、目をギョロッさせて険しい表情をしている頭像で、女優だった花子の演技力を垣間見るようです。
ロダンは花子をモデルに58点もの作品を生み出しました。花子は作品完成までロダン夫妻と共同生活することもあったそうです。ロダンの没後、フランス政府の所蔵となった彫刻作品のうち2点を花子が譲り受け、現在は新潟市美術館に保存されています。
ロダンが好きで彼の芸術にたくさん触れたいという人にも、彫刻はあまりわからないという人にもぜひ訪れてほしい美術館です。
8)マルモッタン・モネ美術館
印象派の画家クロード・モネ(Claude Monet)のコレクションが充実していることで知られる、マルモッタン・モネ美術館。「印象-日の出」「睡蓮」「太鼓橋」「ルーアンの大聖堂」などの代表作が所蔵されています。元々はプライベートコレクションで、凝縮された作品群を見ることができます。
傑作「印象-日の出」
「印象-日の出」という絵は、印象派という言葉が生まれるきっかけにもなった歴史的作品です。
1874年に開催された第一回目のグループ展でモネがこの作品を展示したところ、批評家から「ボヤけた風景画であり、ただ印象を描いただけ」と酷評されました。
絵画のタイトルをネガティブに引用したこの批評がもとで、”印象派”という美術史に名を残すジャンルが生まれたのです。
モネの絵に対する情熱
ここには、モネが生前決して売ることのなかった作品が多く所蔵されています。おそらく出来栄えに納得できず何回も描き直すために、絵を手元に置いていたのでしょう。私はそれらの作品を通して、モネの生々しい熱気のようなものを感じることができました。
私にとっては、彼の「絵に対する思い」が伝わってくる美術館でした。
芸術家の熱い思いを感じ取れる
今回は「パリでおすすめの美術館10選」のうち、近代彫刻の父ともいわれるロダンの作品を所蔵するロダン美術館と、印象派の画家モネの作品を数多く鑑賞できるマルモッタン・モネ美術館をご紹介しました。どちらも芸術家の熱い思いを感じ取れる美術館です。
またロダン美術館に行く前には、ぜひ日本の国立西洋美術館でも「地獄の門」を見てみてください。日本語の説明で予習をしておけば、現地で同作品を鑑賞する際の助けとなってくれるでしょう。
それでは、Bonne Visite!
執筆 KEIJI
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