Paris est belle, mais pas propre(パリはきれいだけれどもクリーンではない)とは、パリに行ったことのある人がよく言う言葉です。
たしかに、パリを含めフランスの有名な街に行くとどこでもフォトジェニックな写真を撮れますが、少し下に目を向けると道にはごみが散乱している、というのはよくあることです。
今回はフランス人の衛生観念ならびに、パリの掃除事情に関してご紹介したいと思います。
パリでも掃除している
以前ほどではないとはいえ、日本ではパリにはキラキラしたイメージがあると思います。しかしパリを歩いていると、日本のほうがよっぽど綺麗なことにすぐ気づきます。
シャルル・ド・ゴール空港の効率の悪さ、空港から市内に行く近郊鉄道(RER)の汚さ、玄関口である北駅(Gare du Nord)の雑然とした雰囲気…。パリの美しさに憧れて来たものの、理想とは全然違う現実に幻滅してしまう「パリ症候群」という言葉まであります。
しかしいくらパリが汚いとはいえ、それを放っておいては世界一の観光都市になれるはずがありません。それではパリの街なかの掃除はどのようにされているのでしょうか。
夏の晴れた週末の夕方には、公園の横のごみ箱はこの状態に…
濡れているパリの街
パリを歩いていてよく気づくのが、なぜか路面が濡れているということ。もちろん飲み物をこぼしたあとだったり、犬のトイレの後だったりすることも多々あるのですが、雨の日でもないのに道の端をせせらぎのように水が流れているのです。その濡れた石畳は光の反射がきれいで写真のひとつでも撮ってみたくなるのですが、これは街の清掃作業の一環なのです。
パリでは毎朝6時から8時頃にかけて市による道路掃除が行われます。まずは写真(中央)のような巨大掃除機で大きなごみを吸い取りつつ、ブラシで路面をこすります。こすって出た細かいゴミは道の端にたまるので、それを掃除用水栓から出る水で洗い流して掃除終了です。この掃除用水栓がパリ市内のせせらぎの源流というわけです。
掃除後は見事に綺麗になりますが、道路の端にたまるゴミの量を見ていると、毎日いかにたくさんポイ捨てされているのか思い知らされます。
右: 濡れているパリの街かど
中央:街なかの巨大掃除車
左: ごみを洗い流すせせらぎ
衛生観念は高くないといわれるけれど…
パリにキラキラしたイメージを持っているのは日本人、もしくはアジア人だけのようです。ヨーロッパやアメリカでは、パリは汚くフランス人は不潔というイメージがあるようで、フランス人の体臭は耐え難いとまで言う人もいます。
近代以前のフランスの家庭や宮廷にはトイレがなかったという事実や、シャワーを毎日浴びないフランス人が多いという固定観念からこういった評価が生まれているようです。
確かに今でも手洗い場のないトイレがあったり、公園や道端で敷物もひかずに地べたでピクニックしている光景をよく見ることを考えると、日本人のスタンダードと比較して衛生観念が高いとは言えないのかもしれません。
以前と比べると変わりつつある
ただ、最近ではフランスの衛生観念も変わってきています。たとえば私のフランス人の友人のほぼ全員が、家では玄関に靴をおき靴下で中に入るといいます。実際、友人や配達の人が家に来るときもほとんどが土足で上がって良いか聞かれます。その理由はフローリングの保護とか足音を立てないためにという人もいますが、基本的には部屋を清潔に保つためのようです。
フランスの家には玄関に土間がないので、出かけに忘れ物を取るくらいであれば靴のまま上がる人もいますが、土足前提だった過去と比較すると衛生観念は向上してきているといえるのではないでしょうか。
フランス人の衛生観念や街のポイ捨ては、それでも昔と比べれば改善されていることは間違いないようです。この10年の間でも犬の糞をほとんどの飼い主が片付けるようになりました。また運河や公園の池から嫌な臭いがすることもあまりなくなりました。
オリンピックで意識は変わる?
パリ市はパリ・オリンピックの競泳をセーヌ川で実施する計画を立てており、河川浄化を積極的に進めています。
あと2年で人が泳げるレベルになるのか少し疑問は残りますが、世界的なイベントは現地人の意識改革の良い機会になるのは間違いないでしょう。
執筆 Takashi