パリの日本街 Rue Sainte Anne
よく知られているように、フランスにおける日本への関心は高いです。パリでは常にどこかで日本関連の展覧会が開かれているし、漢字やひらがなをモチーフにしたTシャツがいたるところで売られているし、公園に行くと必ずと言っていいほど柴犬を見かけます。また今年2021年の夏は東京オリンピック・パラリンピックの開催もあってか、テレビでは日本関連のニュースやドキュメンタリーが例年より多く放送されていました。
そこで今回は、日本のものの中でもフランスで最も市民権を得ていると言える日本食に関してご紹介します。
浸透していくさまざまな日本食
寿司やラーメンといった典型的な日本食がフランスを含めたヨーロッパ各国で人気を博しているのは、よく知られているかもしれません。最近のパリでは他にもそばや、丼物やたこ焼きなどのいわゆるB級グルメまでもが進出し、お店には連日行列ができています。
また “Bento“ という単語は広く通用しており、日本とは特に深い関係のない私の会社の食堂でも、テイクアウトの食事を ”Bento” といって売っていたりします。
お菓子の方面でも、抹茶やゆず風味のものはフランスの有名パティシエも取り入れるほど浸透し、最近ではさらに一歩進んでほうじ茶やあんこの風味を取り入れた洋菓子も登場しています。
さらにはフランス国内で日本酒の生産が始まるなど、日本食は「少し気分を変えたいときに食べる外国の食事」というよりも、イタリアンや中華などと同様に普段から候補にのぼる食事のひとつになってきているといえるでしょう。
大きなスーパーには寿司専門のコーナーも
フランス人の考える「本物」の日本料理店とは?
日本食の人気が高まるにつれて、日本人以外が経営する日本料理店も増えてきています。以前はそういったお店は一目で分かりましたが、最近のパリでは外観や料理の質などでは見分けられないようなお店もたくさんあります。また必ずしも日本人が経営するお店の方が好まれるわけでもなくなってきています。
ですが ”authentique” なものを求めるフランス人のこと。日本人が経営する日本料理店を好む人も多くおり、各自いろいろな見分け方を持っているようです。たとえば私のフランス人の友人いわく「富士山」や「京都」など自分でも知っているような簡単な単語を店名にしているお店は、経営者が日本人ではないとのこと。
また別の友人は、メニューに写真が貼られていたり番号がふられていたりすると、それは日本食の名前に慣れていない店員がオーダーを間違えないようにするためで日本人経営ではないと言います。私自身は特に見分け方は持っていませんが、日本食とともに飲茶やフォーなど他のアジア料理も提供しているお店は、日本人のお店ではない可能性が高いように思います。
あまりこだわる必要はない?
日本人以外が経営するレストランが質の低いメニューやサービスを提供することで、日本食の評判が下がると懸念する声もあります。ただ日本人の経営であろうとなかろうと、競争の激しいパリでお店を構えられるというだけでそれなりの質は確保しているともいえます。むしろ日本人以外の方も日本文化を浸透させる手助けをしてくれている、と前向きにとらえることもできるのではないでしょうか。
日本料理以外でも活躍する日本人シェフ
上記とは逆に、日本人が日本料理以外の分野で活躍しているのも最近よく見られます。
2020年に「レストラン kei」の小林圭シェフがミシュランの3つ星を獲得したことは日本でも広く報道されました。高級レストランに限らず気軽に寄れる街なかのビストロやカフェなども、シェフやオーナーが日本人ということはよくあります。また日本人のショコラティエやピザ職人なども活躍しています。
日本の伝統食材の風味を取り入れていたり、日本人ならではの繊細な飾りつけがあったり、さらには日本的な丁寧なサービスを提供していたりと、日本人が活躍するお店はそうと知らなくてもなんとなく分かることがあります。
日本食以外の分野で活躍する日本人を見ると、同じ日本人としてうれしくなるとともに、自分も頑張ろうというガッツをもらえるような気がします。
フランスの日本食もぜひ
外国で自分の国のものに接すると、その国の人が自分の国のことをどの程度正しく理解してくれているのかが意外とはっきり分かるものです。フランス人は、日本人とは違った部分もありつつも、本当の日本食とは何かを理解しようと努めています。
旅行中にヨーロッパ料理に疲れたら、胃を休める意味でも、また現地の人が日本文化をどのように理解してくれているのかを垣間見る意味でも、現地の日本食をトライしてみてはいかがでしょうか。
執筆 Takashi