10月12日(火)、フランスの脱プラスチック対策の一環として、昨日11日環境省、経済・財務省庁および農業食品省の3省により、野菜や果物のプラスチック包装を2026年から全面禁止する政令が発令されました。そのため2022年1月1日より一部の野菜や果物のプラ包装が禁止になります。
2022年より、野菜や果物30種類のプラ包装が禁止に
まずは来年1月1日より、リンゴ、梨、オレンジ、みかん、キウイフルーツ、レモン、グレープフルーツ、プルーン、メロン、パイナップル、マンゴー、パッションフルーツ、柿など果物のプラスチック製の包装が禁止になります。
野菜に関しては、長ネギ、ナス、ピーマン、キュウリ、ジャガイモ、人参、トマト(通常のトマト)、玉ねぎ、カブ、キャベツ、カリフラワー、大根などの根菜類が対象になります。
これにより、ビニール袋や発泡プラスチックのトレイに乗せてラップをかけた野菜や果物はスーパーの棚やラックから消えることになります。
これらの果物や野菜はすでにバラで計り売りもされており、皮が厚いなどの理由で包装しなくても痛まないため、生産業者の対応が比較的簡単な野菜は来年から本政令の実施対象になります。
年間1億枚のプラ包装削減へ
環境省によると、現在販売されている野菜や果物のうち実に37%がプラスチック包装されています。今回の政令により毎年一億枚もの「不必要な」プラ包装が削減されます。
とはいえ、新しい政令が発令される際によくありがちな「例外」が今回も盛り込まれています。
来年から対象になる野菜や果物からインゲン、ネクタリン(2023年7月より)、アスパラガス、マッシュルーム、ほうれん草、レタス(2025年1月より)、イチゴ、ブルーベリー(2026年7月より)など「包装しないと傷みやすい」とされる品目が外され、これらへの適用は2023年〜2026年と先送りされています。
また1.5kg以上のまとめ売りや、大きな野菜または果物の切り売りといった加工品も「例外」に含まれています。
大手スーパー業界ロビーで適用時期先送り、「遅すぎる」と環境保護団体
環境保護団体フランス・ナチュール・アンヴィロヌマン(France Nature Environnement)でゴミ問題を担当するマルガリータ・ヴェルブー(Margarita Verboud)氏は、今回の禁止が発令されたことを「歓迎」しつつも、「既にバラ売りもされている」一部の野菜や果物の「例外」設定に「非常に残念」とコメントしています。
ヴェルブー氏によると「関係する業界(スーパー、卸業者など)がロビー活動を熱心に行った」結果、こういった「先送りが許された」とコメントしています。
大手小売り業界は、桃やアプリコット、一部の野菜に関しては、春先にまだ青いまま収穫され長期保存されて市場に出荷されるため即座な対応は難しいことを理由にあげています。
また、これらの野菜や果物は「プラ包装なしでは痛みやすくなる」ことから、今回政令を発令した3つの省は、現在フランスに存在する「食品廃棄削減法」に反するというジレンマに陥ったことも影響しています。
有機栽培のほとんどがプラ包装
現在フランスのスーパーで、ビニール包装やプラスチックのトレイにのせラップをかけて販売されている野菜や果物の多くは「有機栽培」(注1)で作られたもので、フランスでは「BIO(ビオ)」と呼ばれています。
その理由として、バルバラ・ポンピリ(Barbara Pompili)環境相のアドバイザーは、「生鮮野菜売り場で、有機栽培の野菜や果物を従来の生産方法で作られたものと接触させてはならない」ため、今後スーパーでは「売り場を再アレンジする必要に迫られるだろう」と述べています。
脱プラへ【バラ売り義務】強化、2030年メド
環境省によると、今回の野菜や果物のプラ包装禁止は政府の脱プラ政策のほんの一部で、今後スーパーの棚から徐々に「プラスチック包装が消えていく」ことになります。
環境省は、フランスでは既にプラスチック製の使い捨てストロー、使い捨てフォーク、ナイフ、皿やコップ、更にテイクアウトに使うポリスチレン(スチロール樹脂)製(注2)の容器(今年1月から禁止、6月末まで移行期間)や綿棒のプラスチック棒も禁止されています。
現在スーパーの総売り場面積のうち僅か1%〜3%しか「バラ売り」に当てられていませんが、2030年には20%にまで引き上げることが義務化されます。
今後、化粧品や牛乳などの乳製品、野菜や果物の中から無駄な包装がどんどん削減されていくことでしょう。
(注1)日本で定められる「有機栽培」と基準が異なる場合があります。
(注2)現時点でポリスチレン製品は、リサイクルがほぼ不可能または非常に困難とされ、焼却か埋め立て処分が行われています。現在テイクアウト容器への利用は禁止されていますが、肉や一部の野菜やフルーツなどを販売するための使い捨てトレイとしては使用されています。
執筆:マダム・カトウ