2024年11月22日(金)、日本の漫画「キャッツ・アイ」をドラマ化したフランス版『CAT’S EYES』が今月11日にフランスのテレビ局TF1で放送開始され、初回は500万人、第2話、3話も400万人が視聴するなど好スタートを切っています。原作者で漫画家の北条司氏も賞賛する、パリを舞台にした新たな脚本で、エッフェル塔やルーブル美術館など観光名所が背景に制作されたフランス版、原作のファンからは賛否両論です。
フランスの30~40代にノスタルジーを喚起する『CAT’S EYES』
『キャッツ・アイ』はフランス語で”Signé Cat’s Eye”(「サインはキャッツアイ」の意)のタイトルで、1986年にフランスで初めて日本版アニメが吹き替え放送されて以来、90年代にかけて大成功をおさめ、その後何度も再放送されている人気アニメの一つです。
毎週日曜日の午後にテレビでこのアニメを見ていた今の30代、40代のフランス人たちは、このドラマの冒頭のテーマソングを口ずさみ、子供のころを思い出します。
原作のヒロイン、来生瞳、泪、愛は、今回の仏版ではシリア(Cylia)、タム(Tam)、アレクシア(Alexia)のシャマンド(Chamade)三姉妹となってパリを舞台にドラマが繰り広げられます。
三姉妹のキャストには『運命の炎(Bazar de la Charité)』のカミーユ・ルー(Camille Lou)、テレビシリーズ『バルタザール(Balthazar)』のコンスタンス・ラッベ(Constance Labbé)、TV女優のクレール・ロマン(Claire Romain)が選ばれています。
評価は真っ二つ、称賛の陰に「原作とかけ離れている」
最初の3エピソードを見た視聴者の感想はおおむね良好で、半数以上は「エネルギッシュ」で刑事物としての「ストーリーが清々しい」と称賛しています。
一方、原作の漫画とは「無関係な内容」になっていると、残念がる人もいます。
確かにリメイク版や小説の映画化などでよく聞かれる感想ではありますが、言い換えるとこの漫画がそれだけフランスの一世代にカルチャーの一部として受け入れられ、カルト的な作品になっていることを表しています。
製作費2500万ユーロ、メディアフランチャイズをめざし
フランス民放テレビTF1は、同社として最も高額な製作費2500万ユーロ(約40億円/1ユーロ=約162円)をかけた『CAT’S EYES』の視聴率や12月に行われる深夜放送の視聴データに大いに注目しています。
これは同局がこのテレビドラマシリーズをメディアフランチャイズ(注)として確立することを目指しているからです。
(注)映画やテレビ、ビデオゲームなど、オリジナルのフィクションの知的財産権を他の当事者にライセンスし、様々なメディアで商品化すること。
大ヒットした『ルパン』を意識
この作品の雰囲気や舞台設定などから、Netflixで大ヒットした『ルパン』(”Lupin”)を大いに意識していることがうかがわれます。
『CAT’S EYES』でもドラマの中でモダンで理想化されたパリの街、目を見張るような盗み技、ちょっと抜けているけど親しみをもてる警察官、そして裕福な悪党が描かれています。
フランスで最も視聴率の高い番組から「中年女性視聴者」を奪取
TF1は視聴率の良さから、12月から1回に2エピソードではなく毎回1エピソードずつ放送することにし、ファンの楽しみを長引かせようとしています。なぜならこのドラマの放送時間である月曜21時10分は、ライバルM6局が放映するフランスの50代未満の女性にもっとも視聴率が高いリアリティー番組『愛は草原に』(仮題:“L’amour est dans le pré”)があるからです。
消費行動の意思決定者であるこの層の視聴率が高いことは、広告主の獲得と広告価格に大きく影響するため、TF1はM6から視聴者を奪うことを狙っています。
北条司氏サイト:フランス版『CAT’S EYES』のストーリなど(日本語)
執筆:マダム・カトウ