4月19日(火)、フランスで最も消費されている油「ひまわり油」ですが、ロシアのウクライナ侵攻で買いだめに走る消費者が増えています。その結果、すでに買いだめが顕著な小麦やパスタに次いでスーパーで品薄となり始めました。この現象はオリーブ油を生産する南仏プロヴァンスの生産者に「チャンス到来」でしょうか?
食用油の販売、前年比で55%アップ
先週1週間、4月4日〜11日の食用油の売り上げが前年比で55%も増えています。小麦(57%増)やパスタなどこの傾向はすでに数週間前から顕著になっています。
スーパーで普段なら1リットル瓶を1本買うところを3本買っていく人がいるようです。
「ひまわり」が国花になっているウクライナのひまわり油の生産量は世界一で、ロシアと併せて世界のひまわり油の輸出量の実に78%を占めています。
2月末にロシアのウクライナ侵攻が始まった頃のひまわり油の売り上げは、前年比では33%増ですが、新型コロナによる第一回目のロックダウンが始まった2020年の3月上旬(ロックダウン中に家で料理やお菓子作りをするため)と比較すると4%増になっています。
大手スーパー「夏まで在庫は十分に」
買いだめに走る消費者に対し、大手スーパー業界では在庫切れの不安を解消しようとする発言が目立っています。
スーパーチェーン、ル・クレールグループ戦略委員会代表のミッシェル=エドワール・ルクレール(Michel-Edouard Leclerc)氏は「今のフランスでは食料品や日用品の在庫切れはないし、少なくとも夏まではありません」、「パスタの在庫は十分にあり、ひまわり油も6月までは十分にあります」と月初に出演したBFMTVのテレビインタビューに答えています。
「パニックにならないで」
別の大手スーパーチェーン、システムUのドミニク・シェルシェール(Dominique Schelcher)氏は、「買いだめしている人がいるため一部の棚が空になっていることがありますが、商品はメーカーではないにしろ、順次入荷してきますのでパニックにならないでください」と、出演したラジオ番組で消費者に呼びかけています。
ひまわり油不足、プロヴァンスのオリーブ油にチャンスか?
ひまわり油の在庫が逼迫するのは夏以降になると予想される中、スーパーのオリーブ油のコーナーには商品が平常通り並んでいます。
オリーブの産地で知られる南仏のプロヴァンス地方にとって、オリーブ油の需要が増えるチャンスなのではという見方も出ていますが、果たしてどうでしょうか?
仏スーパー販売のオリーブ油、「ほぼ全て」が輸入
「ひまわり油が無いからといってオリーブ油やバターを消費者が使うかはわからない」というフランスオリーブオイル生産者協会、フランス・オリーブ(France Olive)の会長イヴ・ギロマン(Yves Guillaumin)氏によると、そもそもスーパーで売られているオリーブ油の平均単価は人瓶あたり7ユーロ(約970円/1ユーロ=約138円)で、フランスメーカーのものも含めほぼ全てがフランス国外からの輸入品です。
その多くはオリーブ油の最大の産地であるスペイン産で、イタリア産、チュニジア産と続きます。
フランスにおける年間のオリーブ油の消費量は12万トン、うち11万5000トンが輸入で、フランス産はわずか9500トンに過ぎません。
プロヴァンス産のオリーブ油、「品質重視」でシェア低く
しかもプロヴァンス産のオリーブ油の80%が産地直売されているか、高級食品店で販売されているか、産地周辺地域で消費されています。
フランスのオリーブ農家は伝統的な栽培方法を維持するなど品質重視で、AOP(保護原産地呼称)と呼ばれる認定を受けている畑が7つあります。
ギロマン氏も「1リットル25ユーロ(約3,450円)もする油で揚げ物は作らないでしょ?」と述べています。
プロヴァンス産は「地産地消」
「そもそも国内の需要を満たすような生産量がない」と話すプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール(Provence-Alpes-Côte d’Azur)地方議会の農業担当ベネディクト・マルタン氏(Bénédicte Martin)は、「地産地消ブームが需要増を引き起こし、すでに生産量を5000トンから7000トンに増やしている」と語っています。
フランス・オリーブ協会は、現在のひまわり油の在庫逼迫でオリーブ油の需要が増えても「急に生産量が増やせるわけではないのはスペインなどの輸出国でも同じこと」なので、「あるとすれば、やはり価格が上昇するだろう」とコメントしています。
執筆:マダム・カトウ