3月15日(火)、ロシアへの経済制裁の影響にともないガスやガソリンの価格が高騰するなど、フランスでもインフレが加速しています。食料品などの値上がりは、フランス国民の家計にひびいてます。
「少しでも安く」スーパーをはしご
パリ15区のHLM(低家賃住宅)に近いハードディスカウントショップは朝から混雑しています。
子供3人を持つシャンタル(Chantal)さんは「何もかも値上がりして、このミカンも高くて手が出ないわー。マルシェに行って安かったら買うわ」とため息をついています。
いくつかのハードディスカウントやスーパーを回って価格を比べるのはもう「当たり前」で、セールや値引き品などを見かけたら一番安い物を買うことにしています。
「最安値の品が値上がりしている」というアンヌ(Anne)さんによると、スーパーマーケットの値上りはハードディスカウントショップに比べ倍近く、食料品が「25%から30%値上がり」しているようです。
野菜も果物も肉も値上がりしているので食費を「切り詰めている」ようですが、「育ち盛りの息子がいるから、限界がある」とコメントしています。
インフレ、食料品を直撃
調査会社ニールセンIQ社の調べによると、食料品目の68%がインフレの影響を受けています。
同社の調査結果によると、先述のアンヌさんが言う通り、スーパーでの値上りはハードディスカウントショップの倍近くになっていました。
過去1年間の値上げ率を見ると、スーパーでは+0,75%に対し、個人商店で+0,45%、ハードディスカウントショップでは+0,34%という結果がみられます。
昨年2月と今年の2月比で、値上がりがもっとも顕著な品目は:
パスタ(+11,4%)、小麦などの穀類(+3,4%)、食用油(+2,6%)、コーヒー(+2,5%)、米(+ 2,4%)
となっています。
「最安値」が高騰
これが通常メーカーのブランドより安価で販売されている、大手スーパーチェーンの「プライベートブランド」(スーパーの独自ブランド)になると、価格の上昇率はさらに高くなっています。例えば:
パスタ(+42%)、コーヒー(+12%)、食用油(+11%)
となり、低価格を維持することが困難になっています。
買い物、エクセルで管理
スーパーで買う食品の値上がり幅がまちまちで、家計の管理に今まで以上に注意している人が増えています。
年金生活者のクリスティアンヌ(Christiane)さんは「予算オーバーが絶対にできない」からと、出費をエクセルで管理し、毎日銀行の残高証明と照らし合わせています。
「この物価高で貯金が目減りしてきている」と言うベアトリス(Béatrice)さんは、そもそも収入が高くないため余暇に使うお金は普段から削っています。
予算は「食べるだけ」に
この夏のバカンスは「近場に行くか、期間を短くする」かもしれないし、最悪の場合「どこにも行けないかも」と危惧しています。
企業でインターンをしているダヴィッド(David)さんは、「パスタも米も値上がりしている」から予算の使い道は「食べること」優先にしていますが、「それって悲しいよね」とコメントしています。
まだ終わりじゃない物価上昇
先述の調査会社によると、現在のインフレの波はさらに2回押し寄せ、3%ぐらいの価格上昇が予想されます。
まず、近々フランスの国産メーカーで、今後は現在のような一部の食品だけでなく、他の食品や生活用品全般に影響が出ると懸念されています。
その根拠として同社は、ウクライナでの生産不能やロシア経済制裁の影響が本格化し、小麦やひまわり油、包装に使われるアルミなどの「価格がさらに上昇する」ためと見ています。
別の予想では、この夏までに5%、ウクライナでの戦争が長引くとそれ以上の価格上昇もあり得ると言われています。
執筆:マダム・カトウ