フランス 侵略的外来種への対策にむけた国家計画を発表

2022.03.17

花 蝶3月15日(火)、フランス政府は生物多様性の保護に向けた新しい国家計画を発表しました。侵略的外来種への対策が主な課題となっています。

 

侵略的外来種とは

侵略的外来種とは、ある地域にもともと生息していなかった生物(=外来種)の中で、「地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるもの」を指します(環境省による定義)。

日本では、沖縄本島や奄美大島のマングース、小笠原諸島のグリーンアノールなどが侵略的外来種にあたります。

なお侵略的外来種がもともと危険というのではなく、生息した地の環境や生態系に悪影響を及ぼす性質をもつ場合に、対策が必要とされます。

 

フランスにおける侵略的外来種の問題

2019年に行われた国際自然保護連合(IUCN)大会では、侵略的生物への対策として25年間にフランスで約90億ユーロが費やされるとの調査結果が発表されました。

この調査では、侵略的生物は約100種あると明らかにされましたが、フランスにおける独自調査では2700以上あるとされています。

とくに当該地域の外から持ち込まれた動物や植物が病原菌を持ち込み、一度持ち込まれると根絶しにくいことから、生物多様性を侵害していると考えられています。

ナントの港湾での被害

例えばロワール(la Loire)地方では、メコン川流域から入ってきたシジミの一種(corbicule)が、地元産の生物に悪影響をもたらすとして漁師の頭を悩ませています。

ナント(Nantes)では、ベトナムのホーチミンと同様に木製の港湾施設があり、タンカーのタンクへ水を移し替えるなどのタイミングでメコン川の水がロワールの三角江に入り込んだことが原因と考えられています。

その後、このシジミの一種が、フランスにおける淡水の生態系の土台となっている植物プランクトンを除いてしまい、淡水魚の数が激減してしまったといいます。

アレルギーの原因にも

気候変動も、侵略的外来種が棲み着く理由のひとつです。

フランスで最も危険視されている侵略的外来種のひとつ、アメリカオニアザミ(l’ambroisie)は北米からオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ(Auvergne-Rhône-Alpes)に持ち込まれました。

50万人以上がアメリカオニアザミのアレルギーをもつと言われ、これにかかる医療費は4000万ユーロと見積もられています(2016年)。

 

2030年までの計画

今回、ベランジェール・アバ(Bérangère Abba)生物多様性担当副大臣は、侵略的外来種の対策に関する2022年から2030年の国家計画を発表しました。

この計画では、以下の4点を優先課題としています。
1.侵略的外来種を所持する、あるいは関係する個人や団体への啓発を行う
2.侵略的外来種に関するガイドラインを作成する
3.監視に関する、法的な枠組みを整備する
4.法的措置の適用を保証するための行政・法律による枠組みを結集し強化する

とくに2022年には、外部から棲みつく恐れのある生物種への対策に150万ユーロの予算を投じるとのことです。

現在フランス政府は、アオガニ(青手蟹、青蟹とも呼ばれる)、ブタクサの一種(crassule de Helms)、クワッガガイ(Moule Quagga)、オリエントスズメバチ(frelon oriental)の商用目的での所持や運搬への制限を設けるための法令も審議しています。

執筆あお

参照
環境省 「日本の外来種対策 侵略的な外来種
フランス環境省 Biodiversité : présentation et enjeux
フランス環境省 Lancement du plan d’action pour prévenir l’introduction et la propagation des espèces exotiques envahissantes

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