2月9日(水)、政府報道官のガブリエル・アタル(Gabriel Attal)氏は、感染状況の改善を条件に、3月末から4月初頭にワクチンパスポートを廃止することを示唆しました。
ヨーロッパでは、チェコ、スウェーデン、イスラエル、デンマーク、イギリス、スペイン、スイスなどでコロナウイルス感染対策の措置を軽減する動きが大きくなっています。
ワクチンパスポート廃止へ
アタル氏は9日、閣僚会議を経て記者団に対し、感染状況の改善を理由にワクチンパスポートの廃止など感染対策措置を緩和する方針を表明しました。
専門家 パスポート廃止は条件付き
感染症学者で、ワクチン戦略方針諮問委員会(conseil d’orientation de la stratégie vaccinale)委員長のアラン・フィッシャー(Alain Fischer)氏も、上院の社会問題委員会(Commission des affaires sociales du Sénat)において同日、さまざまな条件がそろえば、3月末から4月初頭にかけてワクチンパスポートを廃止できると述べました。
その条件とはまず、感染者数が現在の少なくとも10分の1以下になることです。次に、医療機関の逼迫が改善されることすなわち、医療機関が通常通り機能し、コロナ感染者でない患者が治療を受けられる状態になることです。
さらに、フィッシャー氏は、追加ワクチンの摂取が大事な要素になると強調しました。政治的な決定があるとしても、追加ワクチンの摂取を増やすことは必須の条件と考えているようです。
フィッシャー氏は、これらの要素がそろうことを条件としつつ、「すぐにそうなるだろう」と前向きなコメントを発表しています。
医療機関の状況は改善せず
フランスでは現在、1日の新規感染者数が急減しています。フランス保健省の8日夜の発表では、新規感染者数が23万5267名で、1週間前の41万6896名から約56%減少しています。1週間の平均をとっても21万1716名と、感染者数が落ち着いてきていることが分かります。
一方、重症者数は3,555名、この数は先週の3,751名から微減にとどまります。また、10万人あたりの発症率は2,498名で、この値は上昇しています。このように医療機関の逼迫が今後改善されるかに注目する必要があります。
ワクチンパスポート反対運動への政府の対応
SNS上で動員された、ワクチンパスポート反対運動について、アタル氏はコロナ禍や適用の続く措置への気の緩みが見られることを認識しているとしたうえで、ウイルスと共にする生活にうんざりしている人々の存在や、しばしば過激な政治運動が行われる状況に言及しました。
それでも「フランスはヨーロッパの中では、市民の自由に足かせをはめるような強制的措置の最も少ない国のひとつ」だとして、「コロナ・ワクチンパスポートの恩恵によりできるだけ制限措置を限ることを選択した」と強調しています。
ヨーロッパ各国の状況
オミクロン株の感染力の高さから、感染率はかならずしも改善しているわけではないものの、ヨーロッパのいくつかの国はすでに感染対策措置を大幅に軽減しています。
チェコでは2月9日よりワクチンパスポートの提示義務を廃止、スウェーデンでも大規模な集会でのパスポート提示義務などを廃止しています。スウェーデンでは、バーやレストランの営業時間への規制や、パーティションの設置義務なども廃止しました。交通機関内で、混雑時のマスク着用義務も廃止しています。
イスラエルやデンマークでも、スウェーデンと同様の緩和措置が実施されています。
スペインのカタルーニャ地方ではすでに1月末にワクチンパスポートの提示義務を廃止しています。また、スペイン全体では12月末以降のオミクロン株の感染拡大により、屋外でもマスク着用が義務付けられていましたが、これも近日中に廃止される予定です。
イギリスではすでにワクチンパスポートを廃止し、スイスでは2月中旬以降にもレストランや文化施設でのパスポート提示義務、また公共交通機関内でのマスク着用義務、集会に関する制限措置を廃止する見通しです。
これらの国内での動きをうけて、外国人受け入れやビザ発行などにも変化が訪れるでしょうか。
執筆あお