EU議長国フランス マクロン大統領がストラスブールでスピーチ

2022.01.20

今年20周年の通貨ユーロはフランスにとってよかったかで世論真っ二つ1月19日(水)、フランスのマクロン大統領は、フランス北東部のストラスブールにあるヨーロッパ連合(EU)本部で20分間のスピーチを行いました。大統領選挙を3ヶ月後に控える中、フランスは2022年1月から6ヶ月間、EUの議長国を務めます。

スピーチ後には、EU議員との質疑応答があり、現在議論されている中絶法や環境問題に関するやり取りが行われました。

 

環境アクティビストの厳しい視線

EU議会の入り口でマクロン大統領を迎え入れたのは、”Climat, climat, Macron coupable !”(「環境、環境、マクロン、有罪!」)の掛け声を上げる環境アクティビストらでした。彼らはスピーチに先立ち、EU議会の前でデモを行っており、環境政策の改善を主張しました。警備員がすぐに議場の外で連れ出しましたが、波乱の到着風景となりました。

フランス国内では、環境政策重視派が人気を集めており、大統領選挙に出馬予定のマクロン大統領はヨーロッパ政治においても環境分野における取り組みを軽視できません。

 

安全保障・外交 対ロ政策、EU内で団結を強調

マクロン大統領がスピーチでまず言及したのは、環境問題ではなく対ロ関係でした。これは、最近ロシアがウクライナ国境付近の軍を増強している状況を鑑みてのことです。

スピーチでは、「数週間のうちに新たな安全と安定の秩序を築くための提案を行うべきである。まずは加盟国内で、次にNATO加盟国内で、そしてロシアとの交渉に臨むべきである」として、EU加盟国が軍事・安全保障を強化することを強調しました。

アフリカ外交、東欧問題

アフリカ諸国との外交については、2022年7月までにワクチン7億回分を送る目標を提示しています。中国などが「ワクチン外交」を進める中、アフリカ外交におけるEUの地位を確保することを狙った発言と考えられます。

また、西部バルカン諸国のEUへの加盟について、「合理的なタイミングで」加盟できるよう検討する進める方針を示しました。

 

EUの「ヴェイユ法」成立なるか

欧州刷新(Renew Europe)グループ(中道)を率いるステファン・セジュルネ(Stéphane Séjourné)氏は、EUレベルでの中絶法に言及しました。

セジュルネ氏はフランス政府報道官のガブリエル・アタル(Gabriel Attal)氏とPACS(性別に関係なくパートナー関係を認める連帯市民協約)を結んでいます。マクロン大統領と関係が近いことで知られ、フランスが議長国の期間に、ヨーロッパレベルでの中絶法を成立させたい考えです。

「ヴェイユ法」という名前は、フランスで1975年にシモーヌ・ヴェイユ(Simone Weil, 1909-1943)が成立させた、人工妊娠中絶を合法化する法にちなんでいます。

しかし18日にEU議会の議長として選出されたばかりのロベルタ・メツォラ(Roberta Metsola)氏(マルタ出身、欧州人民党(EPP))は、中絶法への反対をはっきりと主張しています。フランスが議長国として、またジェンダー問題の先進国として指揮を取ることができるか注目です。

 

大統領選挙を見据え、環境問題への取り組みは

マクロン大統領はスピーチで、2050年までに脱炭素を目指すという目標を定めた2015年のパリ条約に言及し、環境問題が専権事項であることをアピールしました。目標の実現に向け、産業構造の転換、水素電池などの技術への投資を行う方針です。

しかし質疑応答では、欧州エコロジー・緑の党(Europe Ecologie-Les Verts, EELV)を率いるヤニック・ジャド(Yannick Jadot)氏が、環境問題への取り組みの甘さを批判しました。ジャド氏は大統領選への出馬を予定しており、フランス国内でも人気を集めています(過去記事「仏政治家の好感度、エコロジー党首ジャド氏の人気急上昇」)。

マクロン大統領に対してジャド氏は、フランスが環境問題に懐疑的なポーランドやハンガリーとの同盟関係を強めていること、また、就任後これまで気候変動に対して「何も行動していない」と指摘しています。大統領選挙での勝利を見据えると、マクロン大統領は環境分野においてヨーロッパレベルでの取り組みを強化することが求められています。

執筆あお

参照 欧州連合日本政府代表部(2020年8月)EU情勢概要

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